残り十二人

文字数 4,144文字

 1.

 荷馬車が一台、一台、また一台と、フクシャ近郊の小さな町に吸い込まれていった。列をなす商人たちは、商会ごとに異なる紋章を衣服に縫い付けていた。日が暮れ、彼らは酒場に集まった。情報交換が行われた。
「カーラーンはもう終わりだな」
 厨房の奥の出入り口に寄りかかって立つ用心棒の女が、長い睫毛に縁取られた青い宝石のような目をホールへと向けた。
 あるテーブルでは、シオネビュラを訪れているソラートのミサヤ・クサナギ二位神官将補の噂が囁かれていた。
 タルジェン沖は航行禁止になっているとのことだった。
 ヨリスタルジェニカ艦隊が姿をくらました、と。
 また別のテーブルでは、短期間で立て続けに起きた奇妙な暗殺事件の話で持ちきりだった。
「で、どうもよ、殺された連中に共通してるのが、ここ五、六年の間に星獣がらみの取引だの研究だのでリジェクに行ったことがあるんだと」
 女用心棒は、高く結い上げた夜空の色の長い髪を後ろに払った
 噂話は続く。
「直近の三件ほどは人目につくように行われてね。犯人はそう……創世……創世ナントカ……なんて言ったかな」
「『創世潰しのミスリル』」
 皿洗いの少女が呟いた。赤茶色の髪の少女だ。
 だが。
 用心棒と皿洗いの関心は、今しがたカーラーンの名が飛び出したテーブルに向けられていた。そのテーブルで、女が立ち上がらされた。隊商には不似合いの、パッとしない、若い主婦であった。そのせいで、テーブルに注目するのは店の裏方の女たちだけではなくなった。
「おい! みんな聞けよ」三十そこそこの商人も、並んで立ち上がった。「この人はカーラーン・ダーシェルナキに市民兵として働かされてたんだ。まだ二十歳(はたち)になったばかりのお嬢さんなのによ!」
 テーブルの男たちは、露骨ににやけている者こそいないものの、どこか浮ついて見えた。
「もうコブレンにはいられないから俺たちが保護したのさ。さあ、コブレンで見たものを話してくれ」
 用心棒が腕組みして見つめる中、女は青ざめ、震える唇で呟いた。
「星獣……」
 震えているのは唇だけではなかった。
「なんだ!? 聞こえねぇな!」
 野次に硬直する女に代わり、商人が答えた。
「星獣さ! 日輪連盟軍は星獣を使ってコブレンの市街地を制圧したんだ」
 静まり返ったホールで、商人は一つ咳払いし、精一杯重々しい声で付け足した。
「星獣を使ってコブレンの二重城壁を攻略したんだ」
「星獣は攻城兵器にゃならねぇよ。(もろ)いし、歌い手の声が届かねぇ」
「自ら歌う星獣だ」商人は髭面の男に反駁(はんばく)した。「俺は見た」
 ホールは一転、笑いに包まれた。
「戦争は変わる!」
 その叫びで笑いは収まった。
「新しい星獣が戦場を変えるんだ!」
「待て、待て」髭面の商人は、半笑いで手をひらひらさせた。「仮によ、そんなものを市街地に投入したら何が起きる?」
「それはこの人が語ってくれる」
 注目の中、女は蒼白な顔で俯いていた。髪で顔が隠れ、顎と口だけ見えていた。
「市街地で星獣たちはどうした?」
 テーブルの下で商人が彼女の足を踏む様子を、女用心棒の、睫毛の影が落ちるサファイアの瞳が照らし出した。
「え? 言ってみろ」
「星獣は」長い沈黙の後、女はやっと答えた。「完全に日輪連盟軍の制御下にありました」
「あの人は『星獣が市街地で市民を虐殺するんじゃないか』と聞いたんだ。どうだ?」
「市民への虐殺は――」
 荒い呼吸ゆえに、女の胸と肩は大きく上下している。
「――起きませんでした」
 それきり崩れ落ちるように椅子に座り、テーブルに突っ伏した。
「そう。俺たちが見た星獣は市民を誰一人傷つけなかった。なのに無害で高価な星獣を襲い、奪い去ろうとした連中がいる」腕を広げ、「コブレン自警団をはじめとする無法者どもだ」
 何人かの商人たちが話しに興味を失うなか、用心棒の目の光が、睫毛の奥で冷たく鋭くなる。
 元の喧騒が戻りつつある中、商人は熱弁を振るい続けた。
「自警団の建物は日輪連盟軍が占拠した。あの街の他の無法者もだ。殺し屋市場は壊滅だ。だがコブレンは良くなる。新しく安全な市場(しじょう)に生まれ変わるんだ」
 用心棒が動いた。長身の女だが、ほとんど誰の気を引くこともなく流れるように縫い歩き、椅子と椅子の間を通って店の出入り口に向かった。今まさにその出入り口から、三人一組の客が出て行こうとするところだった。
「お客様」用心棒が声をかけると、一行は半開きの扉の前で振り返った。「お代を頂きませんと」
 身なりのいい壮年の男が一人。あとの二人は護衛兼従者といったところだろう。皿洗いの少女は走って裏口から出て行った。従者の一人が用心棒の肩に硬貨を投げつけた。
「釣りは取っとけ、女」
 だが。
「いいえ」硬貨が落ち、床を転がりゆくのにも構わず、女は晴れやかな笑みを見せた。「お金じゃないんです、議長」
 そのとき、半開きだった扉が外から大きく開かれて、従者の一人が外の闇に引きずり出された。短くくぐもった悲鳴に続き、どさりと人が倒れる音がした。
 もう一人の従者は口を大きく開け、だが声を上げることなく主人を庇おうとした。壮年の男は従者を押しのけて夜の(とばり)へ逃げ去った。残った従者も間もなく引きずり出され、気絶させられた。早業(はやわざ)だったので、喧騒に満ちた店内の誰も騒ぎに気付かなかった。用事棒は扉を閉めた。
 逃げ去る男はグロリアナの町議会議長だった。彼は路地の闇に身を浸し、直後、後悔した。暗闇こそは暗殺者の主戦場ではないか。だが幸い、路地の向こうに広場の光が見えていた。賑やかな音楽も。
 隊商付属の楽団だ。
 果たして闇を駆け抜けると、炎の明かりの中で、歌と踊りが繰り広げられていた。篝火の前の踊り。炎を挟んで楽団。町の人々も家を出て集い、子供たちも夜更かしし、手拍子を打つ。殺風景な小さな町の広場も、今夜は華やかだった。
 男は二つの事実に気がついた。
 一つ。奏でられる楽曲は、年末の星獣祭にて奏でられる楽曲の一つであること。
 一つ。篝火を背に立つ男が、人の輪に溶け込みながらこちらを凝視していること。顔は逆光で影に覆われているが、視線があったことだけは、はっきりとわかった。長身で、体つきの逞しい男だ。であるにも関わらず、周囲の人々は、誰もその存在に気付いていないかのようだった。
 その男、ミスリルは、火の粉と黒い人垣を背景に、グロリアナから来た男へと足を踏み出した。標的が腰の剣に手をかけたときにはもう、抜いても間に合わないくらい距離を詰めていた。
 右手にダガーを握りしめ、左手で標的の顔を掴んで体当たりを食らわした。標的を路地の暗がりに押し込んで口を塞ぐ。
「グロリアナ町議会議長クロヴァー」すぐには殺さない。「理由を教えてやる」
 男は口からミスリルの手を引き離そうとしながら、見開いた目でしっかりと視線を合わせていた。
「住民から詐取した財産をリジェク神官団に流した。以上」
 喉から放たれる呻き声、そして左の掌に受ける唇の動きで、標的が何を問うているか、ミスリルは察した。
 標的の鎖骨の間にダガーを振り下ろし、心臓から伸びる太い血管を断ち切った。左手の指の間から、生ぬるい液体があふれ、こぼれた。
「俺か?」
 崩れ落ちる男へと、ミスリルは質問に答えてやった。
「創世潰しのミスリル」
 この異名を決する直前の、リアンセとの会話である。
『新しい神話』焚き火に枯れ枝を投じるリアンセは、彼女を憂鬱にさせているものの正体についてようやく口にした。『どういうことだかわからないわ』
『だったら古い神話について考えてみたらどうだ?』
 満天の星、白色光を放つ天球儀の下で、ミスリルは胡座(あぐら)を組み直した。
『俺たちに与えられた公式の神話はただ一つ。神である地球人は言語生命体を創造し、惑星アースフィアで共に暮らしたが、言語生命体たちの愚かさと野蛮さに愛想を尽かして立ち去った』
『つまんないわ』
『ああ、つまらないさ』
 沈黙の中を、風が吹き去っていった。
『あの性欲坊主によれば、リジェクの神官は現行の神話を否定したがってるようだったわね』
 我々は新しく生まれ変わることが必要だ。
 リジェクの神官たちはそう考えていたそうだ。
『何か、そういう突飛なことを考えさせる何物かがグロリアナで見つかった』
 ミスリルは木の枝で土に疑問符を描き、矢印を引いた。
『その後、アウェアクを含む星獣研究に携わる人間が、学問の分野を超えて集められた』
 次の矢印を引く途中で、ミスリルは手を止め、リアンセに鋭い目を向けた。
『リアンセ。どうしてお前はアウェアクにあんなことを聞いた?』
『どんなこと?』
『ヒト型言語生命体を星獣に作り変えることは可能かって聞いただろ?』
『星獣奏の歌語(うたがた)りよ』
 眠たげなリアンセの様子に、ミスリルは表情を和らげて肩を竦めた。
『新しくも神話でもないな』
『でも、星獣奏に含まれる伝承はどれも異色だわ。私はそう思う』
 それに、と、土に広げたマントの上に横たわりながら、リアンセは続けた。
『リジェクが歌流民をかき集めているのは知っていた。星獣の量産体制に入ったんじゃないかって。でも、この時勢でそんなものを量産してどうするつもりなのか、誰も掴めていなかったわ』
『陸軍情報部でもか?』
『正確に言えば』リアンセは肘をつき、手に頭を乗せて支えた。『掴んだ人は殺された』
 明日は我が身よ、と付け加えた。
 今、ミスリルの手の中で、一つの命が息絶える。死体からダガーを抜いて、投げ捨てた――ダガーではなく死体のほうを。
 ミスリルにはある狙いがあった。この異名が暗殺事件の噂と併せて広まれば、もし自警団が追っ手を放っている場合、必ず噂を聞きつける。
 追っ手はアズだろう、と、ミスリルは考えていた。他に適任者はいない。どのような再会になるのか。再会の時は来るのか。ミスリルにはわからない。彼は走り去り、闇に声が残った。
「あと、十二人」


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登場人物紹介

◆ミスリル・フーケ

◆25歳/男性

◆所属:コブレン自警団


『暗殺者を狩る暗殺者』の育成機関、コブレン自警団の団長の一番弟子。正義感が強く、好戦的で熱血だけど気分屋なのでいきなり冷める。自分のことを暗殺者だと思ってるわりに騒々しい。11歳のときに実の母親との間にできた娘が「いないつってんだろっ!!」いません(忖度)。

画像は「このカス野郎をどう始末してやろうか」と思案しているときの顔。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆アエリエ・フーケ

◆27歳/女性

◆所属:コブレン自警団


もとは豪商の娘だったがいろいろあって10歳で浮浪児となり、コブレン自警団に保護された。

女性ながら大鎌をはじめとする長柄武器の扱いに長け、ミスリルの行くところにはどこにでもついて回って敵の生首を刎ね飛ばす。恐い。ちょっと恐い。笑顔がちょっと恐い。足許にひれ伏すと踏んでくれる。マゾは急げ!


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆マリステス・オーサー

◆25歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称テス。鳥好きで頭が緑とかいう実に安直な理由で『真鴨』とか『鴨』とか呼ばれている。

自閉傾向が顕著に強く、表情の変化の乏しさと相俟って「何を考えているのかわからない」という印象を与えがちだが、感じる力も考える力も強いほう。

コミュ障の自覚があるため、コミュ力の高い兄弟子のトビィに対してとても屈託している(嫌ってるわけではない(むしろ大好き(面倒くさいタイプ)))。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 2作目『鳥籠ノ国』

 外伝『失語の鳥』

◆アザリアス・オーサー

◆27歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称アズ。自警団の武術師範の一人であるオーサー師の一番弟子。30歳以下の自警団主力戦闘員の中では第一位の戦闘能力を持つ。

戦いになると実に容赦ないが、素の性格はシャイで温厚。天然だけど人から天然って言われると傷つく(繊細)。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆トビアス・オーサー

◆27歳/男性

◆所属:コブレン自警団


通称トビィ。アズの双子の兄弟。長柄武器を得意とするほか、犬を訓練する技能を持つ。陽気でとっても優しくて、子供と動物が大好きな親しみやすいお兄さんだよ! たまに笑いながら人殺しちゃうけど……。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆レミ・イスタル

◆25歳/女性

◆所属:コブレン自警団


イスタル師の二番弟子。朝寝坊クイーン。三人一組が基本となる重要な仕事ではアズ&トビィと組むことが多く、この二人と一緒にいる日は朝自分から起きてこない。

生真面目かつ強気にふるまっている反動か、妹のようにかわいがってくれる人の前では子供のように無邪気な態度になる。かと思えば妙に機嫌が悪いときもある。特に朝。朝。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

 外伝『使者と死者の迷宮』

◆リレーネ・リリクレスト

◆17歳/女性

◆所属:北方領リリクレスト公爵家


北方領リリクレスト家の公女だが、他家に嫁がせるためのお飾りとして育てられた。でも根が逞しいので環境への適応力が高い。


リリクレスト家は惑星アースフィアが移住可能な環境になる遥か以前から続く古い家であり、その血筋は地球における最初の10体の言語生命体試作品にまで遡るとされている。

それゆえ言語生命体の神である地球人からさえも重んじられ、宇宙戦争が行われた時代に授与された宝冠が数千年ものあいだ家宝として受け継がれてきたがリレーネが6歳のときに壊しちゃった。昔お転婆だったから壊しちゃった。

6歳だけどさすがにこれはヤバイと思って庭に埋めてしまった。

家じゅう大騒ぎになってたけど無駄に意志が固いので沈黙を守り抜いた。

ときおり思い出して寝れなくなる。

たぶん今も埋まっている。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆リージェス・アークライト

◆22歳/男性

◆所属:北方領陸軍


北方領陸軍で最もぼっち飯が似合う男と恐れられる若き護衛武官。階級は少尉。士官学生時代は優等生だった。毎日ぼっち飯だったけど。

なんだかんだでお人好しなので、試験の前にノートを貸してくれと泣き付かれて貸したら試験が終わるまで返ってこなかったりしたタイプ。怒っていいと思う。


巻き込まれ型の不幸体質なので登場するたびにひどい目に遭う。

仮にもシリーズ第1作目のメインヒーローが何故このような扱いをされるのかと思うと不憫で笑いが止まらない。

ごめん間違えた。

涙が止まらない。


とってつけたように言うけどリレーネ付きの護衛である。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

(過去作での名はリージェス・メリルクロウ)

◆パンジェニー・ロクシ

◆22歳/女性

◆所属:北方領陸軍


北方領の護衛武官。試験が終わるまでリージェスにノートを返さなかった犯人。

本編ではリレーネとリージェスが南西領に潜入するのに協力したが、コブレンの手前ではぐれたらしい。過去作を読まれた方のうちの実に99%以上が忘却の彼方へと葬り去ったであろう、シリーズ一作目からのリベンジャー。それでは一言意気込みをどうぞ。

「パンジーって呼んでよ(血涙)」


◆初登場回:8章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

◆リアンセ・ホーリーバーチ

◆24歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


陸軍情報部の間諜。間諜は単独での潜入が必要となる任務が多いため、油断を誘うべく実年齢より幼く見える格好を普段からしている。上腕二頭筋とかムキムキだけど。任務のためだけでなく、本人もかわいい服や小物が大好きである。背筋とかゴリゴリだけど。その甲斐あってか潜入や工作の成功率が非常に高く、情報部内ですら(服の上からの)外見に騙される者が一定数いる。腹筋とかバキバキだけど。

でもそれは、強くなければ生き残れないことをよく知っているからこそ。毒舌だったり辛辣なところがあるけれど、姉と妹のことは大好きな三姉妹の次女。

シリーズ1作目からいるけど登場するたびに箍が外れていく。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆シルヴェリア・ダーシェルナキ

◆20歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


南西領総督シグレイの長子。自分の軍隊が欲しくて18歳のお誕生日に少将の官位を買ってしまった(買ってしまった)。

買官によって権威を得た者に武官たちが向ける目は冷ややかなものだが、シルヴェリアは卓抜した手腕によってたちまち最悪の評価を覆した。

ただし露出の多い服装で人前に出たり、高貴な身分の人間が口にすべきでない単語や言いまわしを使いこなしたり、好色が過ぎて男女問わず手を出したりと問題行動が多い。


弟妹が5人いるのだが、2歳年下の妹エーリカには嫌われている。

もともとプライドが高いエーリカのコンプレックスを刺激しがちなうえ、10歳の頃にエーリカが丁寧に作った押し花を目の前でムッシャムッシャバリボリと貪り食ってからは蛇蝎の如く嫌われている。

何故そんなことをしたのか全くわからない点もまた嫌われている。

しかも父シグレイがその件でシルヴェリアを叱責しなかったので必要以上に嫌われている。

まあとにかく嫌われている。

結論:全部パパが悪い。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆フェン・アルドロス

◆37歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


シルヴェリアの副官。美少年のような色香を漂わせる37歳独身美熟女というちょっとどういう層を狙っているのかよくわからない逸材。お遊びの度が過ぎ、陸軍司令部で17股をかけていたことがばれて無事職場の人間関係を崩壊させる。

前線送りとなった先で出会ったシルヴェリアとはすぐに意気投合し、同性の愛人の座を獲得した。

しかしながら誰にでも見境なくちょっかいを出すわけではなく、性的合意があっても未熟過ぎたり責任能力のない相手には一切手出ししない。当たり前のことなんだけど……。

シオネビュラ神官団のメイファ・アルドロスの実の姉。


◆初登場回:4章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆マグダリス・ヨリス

◆35歳/男性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


歩兵精鋭部隊を指揮する大隊長だったが、編成中だった親衛連隊内の一個大隊を鍛えるべくシルヴェリアに抜擢されていた。階級は少佐。陸軍内においては『歩く殺戮装置』とか『三つ編み三十代』とか陰口を叩かれる。

高潔さと冷酷さを併せ持ち、他人に厳しいが自分に対してはもっと厳しいので立場の弱い者たちからは愛されている。

ときに行動が大胆なだけでなく、天才的な剣の腕を持つため恐い人だと思われることもしばしば。大丈夫。恐くない。たまに一人で百人殺しちゃうだけだ。よくあるよくある。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ヴァンスベール・リンセル

◆20歳/男性

◆所属:南西領陸軍


通称ヴァン。前線部隊に配属されたばかりの士官学校の新卒。リンセル家は海軍士官を多く輩出する家柄だが、本人曰く「伯父さんが恐いから陸軍に来た」。でも本当は船酔いするからである。実は馬にも酔う。

一見してそんなに強そうには見えないけれど実力派のダークホース。士官学校の剣術の成績は一、二を争うレベルだった。なお座学に関しては下から一、二を争うレベルだった模様。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆プリシラ・ホーリーバーチ

◆20歳/女性

◆所属:南西領陸軍


通称プリス。ロザリア、リアンセに続くホーリーバーチ家三姉妹の三女。お姉ちゃんたちが大好きで、リアンセが父親を見限って西方領を出奔するとき一緒に家を出てしまった。

11歳で家をでた娘を心配して母親は父に内緒で送金してくれたのだが、そのお金で「神学校に通う」と嘘をついて陸軍士官学校を卒業。

性格は明るく大胆で、良くも悪くも自分に正直。

陸軍広報部徴募部隊所属。ヴァンとは士官学校の同期の間柄。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆アイオラ・コティー

◆26歳/女性

◆所属:南西領陸軍(解放軍)


南西領陸軍の歩兵部隊指揮官で、階級は中尉。弓術・馬術に秀でるほか、詩人の才をも併せ持つ画伯。特に男性同士の濃厚な接触の模様を描いた画を得意とし、それらの作品は女性士官たちの間でひっそりと流通している。

反乱によって中隊を追われたのちは手許にある過去作と新作を火にくべてから都解放軍に合流。「いつどこで討ち死にしようともこれで私の秘密は守られる」と思ったようだが、まさかこんなところでバラされているとは夢にも思うまい。


◆初登場回:20章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ララセル・ハーティ

◆24歳/女性

◆所属:南西領陸軍


エーリカの専属護衛で、侍従長を兼任する。階級は大尉。クールビューティーなので周囲から勝手に有能そうだと期待されるけど、何かが人よりずば抜けているわけではないので結局勝手にがっかりされる。

冷たい印象の見た目に反して性格は至って素朴で素直。「あっち向いてホイ→」ってやったら全く何の疑問も抱かずに顔を「→」ってやっちゃうくらい素直。褒められて伸びるタイプだと思う。かわいがってあげて……カワイガッテアゲテ……カッ…………カワイガッ…テ…………………………カ……………ゲテ……………………。


◆初登場回:21章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆エーリカ・ダーシェルナキ

◆18歳/女性

◆所属:南西領ダーシェルナキ公爵家


ダーシェルナキ家の第二子。こじらせてるシスコン。

グロリアナ領主ゼラ・セレテスに言い寄って困らせているけど自分は四十手前のトリエスタ伯に言い寄られて困っている。

それではトリエスタ伯に一言

「死にさらせですわ!」

口汚ぇですわ。

そして怖くて誰も指摘しないんだけどインテリアの趣味が悪い。


◆初登場回:10章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ミサヤ・クサナギ

◆31歳/女性

◆所属:ソラート神官団


ソラート神官団二位神官将補。農民の出だが村をあげての推挙と資金援助を得て高位聖職者になる夢を叶えた地元大好きお姉さん。それでは南東領ソラート地方のいいところを語っていただきましょう。



「ソラートの富の源は潤沢な湧き水にある。平原を裂いて流れる水と温暖な気候は滋味豊かな作物を育て、その地方の最も貧しい村の民ですら、まず飢え渇くということがない。澄んだ空気と穏やかな野山に囲まれた環境が人を朗らかにすることから療養地としての人気も高い。かくいう私の夫も、喘息の治療のため幼少期に都から移り住んだ口だ。田舎にありがちな排他的な空気もソラートにはなく、そのため移り住む者がもたらす知識や技術が容易に根付き、その地をさらに住みよい場所にするのだ。無論、これほど恵まれた土地であるから、無闇に野山を切り開いたり、または武力で支配しようとする者たちも多くいた。一つはっきり断っておきたいのだが、住民が温和であることは、侵入者や圧政者への従順とは結びつかない。歴代の……(※これがあと30分続く)


◆初登場回:15章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆ゾレア

◆14歳/女性

◆所属:ソラート神官団


ソラート神官団の従軍歌流民。浮世離れしたミステリアスな少女(※ぼーっとしているだけだ)。


歌流民とは、野山に身を置く流浪の民。大陸中に散らばる彼らは共通する生活様式を持っており、すなわち氏族の歌い手は、歌うときしか声を出さない。

ゾレアの氏族は戦時に歌を売るのみでなく、平時にキノコや薬草を原料とする丸薬を作っていた。歌流民の神秘の力で病が癒されるという思い込みによって服用者の本来の自然治癒力を引き出し、さも薬が効いているかのように見せかけるただの黒い粒である。人体って不思議。

ソラートの住人たちは知っているので買わない。「本体価格よりレジにて20%オフ」とか言われても買わない。


◆初登場回:15章

◆シリーズの他の登場作品

 なし

◆エルーシヤ

◆17歳/女性

◆所属:-


ゾレアと同じく歌流民の少女であり、歌うときにしか声を出さない。その生活で得た不思議な感性を有しておれど、中身は普通の女の子。田舎暮らしが嫌になって逃げてきてしまった。今は陸軍広報部のプリシラ・ホーリーバーチ少尉と行動を共にしている。


都の星獣祭で配られる胡桃の護符は、北ルナリアやグロリアナの山塊を塒とする彼女の氏族が歌によって清めながら作るものだ。胡桃の可食部はクッキーにしてグロリアナの周辺で売られる。商品名は「グロリアナに行ってきましたクッキー」とかだろうか。知らんけど。


ちなみに「エルーシヤ」は歌流民の中でありふれた女性名であり、『失語の鳥』の番外編に出てくるエルーシヤとは完全に別人。


◆初登場回:12章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆マナ

◆14歳(※肉体年齢)/女性

◆所属:-


旅の途中でミスリルが出会う謎めいた少女。自称ミスリルの娘。もし本当に娘だったらミスリルが11歳のときの子になるのだが、当然ながら彼に心当たりはない。心当たりどころか女性と手を繋いで街を歩いたことすらない。

14歳という年齢は推定であり自称。なお生まれてきたとき既に14歳だった。


◆初登場回:6章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆シンクルス・ライトアロー

◆25歳/男性

◆所属:ヨリスタルジェニカ神官団


ヨリスタルジェニカ神官団正位神官将。政争によって傾きかけた西方領の名家の嫡男で、家の再興のために父親によって南西領に送り込まれた。古風な喋り方が特徴だが、ここだけの話普通に喋ろうと思えば喋れる。


過集中と注意力散漫を繰り返す。黙ってさえいればとても美形なのにいらんことまでよく喋る。実家は太いが傾きかけている。頭が良くて弁も立つけどこれっぽっちも自重できない。

そんな残念なタイプの天才だが、物事は前向きに考えよう。

普段はあちらこちらに興味の対象が移ろうが、並外れた集中力を発揮した際の成果は素晴らしい。近寄りがたいほどの美形だが、中身は気さくで親しみやすい。実家も傾きかけたとはいえまだ太い。自然に振る舞うだけで目立ってしまうのは自信家で聡明だからである。

残念なタイプの天才なのではない。

天才なタイプの残念なのだ。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   1作目『壊れた太陽の王国』

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ロザリア・ライトアロー

◆25歳/女性

◆所属:ヨリスタルジェニカ神官団


正位神官将夫人。シンクルスの妻であり、リアンセとプリスの姉。西方領出身。

シンクルスと初めて顔を合わせたのは三歳のときで、このとき既にライトアロー家とホーリーバーチ家の第一子同士として結ばれることが決まっていた。

親同士が決めた結婚とはいえ、成長に従い二人は自然に惹かれあうようになった。

政治的なごたごたから逃れるべく、ロザリアとシンクルスは南西領の神学校に入り直すことが決まり家を出る。同じ時期に、リアンセは父親の当主としての資質に疑問を抱き出奔。

家族喧嘩の最中に妹のリアンセ(脳筋)がカッとなって父親の頭を壺でぶん殴り、心配して見に来たシンクルスが我慢できずに腹を抱えて笑うのを見て以来「実はこの人ちょっとバカなんじゃないか」と思っている。


◆初登場回:5章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

◆レグロ・ヒューム

◆34歳/男性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団二位神官将。

独特の個性と落ち着きなさゆえに生家では「将来の見込みなし」と冷遇されていたが、実際大人になったら兄弟の中で一番有能だったというオチがつく。たぶんヒューム家はもう終わっとる。

他のことはともかく仕事はできるというタイプ。

何故かしら自分のことを美男子だと思っている(根拠不明)。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆メイファ・アルドロス

◆32歳/女性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団二位神官将補を務めるクレイジー長広舌。南西領陸軍のフェン・アルドロスの妹。

アルドロス家の後継がフェンとメイファしかいない事実からお察しいただける通り、もうアルドロス家も終わっとる。

人間としての中身に関しては姉より多少マシなレベル。

甲冑の上から乳首の位置を当てる能力を持っている。


◆初登場回:1章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ニコシア・コールディー

◆29歳/女性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団三位神官将。真面目で責任感が強い性格。二位神官将に対する態度が横柄だが、これでもかつては敬意を払っていた。

出身もシオネビュラ西部で、居城である西神殿の近くに妹夫婦が住んでいる。市内巡行の際など幼い姪が「おばさまー!」と手を振ってくる。

「お姉さまと呼べ」と思っている。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ミオン・ジェイル

◆25歳/男性

◆所属:シオネビュラ神官団


シオネビュラ神官団三位神官将補。神学校卒業から僅か一年で現在の地位に抜擢された経歴を持つ。振る舞いは優等生然としているが口が悪い。

ジェイル家は家格が低く、神学校には長男である兄しか通えないはずだったが、武芸と学問の両方で兄より優れていることを証明し、進学の権利を勝ち取った。この生い立ちゆえに成果主義者である。

現在の地位を得てから両親は掌を返してちやほやしだしたが、家督を継ぐ気はない。ジェイル家も終わっとる。


◆初登場回:7章

◆シリーズの他の登場作品

   2作目『鳥籠ノ国』

◆ゼラ・セレテス

◆25歳/男性

◆所属:ソレリア民兵団


グロリアナ領主にしてソレリア民兵団代表。セレテス家は吹けば飛ぶような底辺領主(((失礼)))ながら、質実剛健を旨とする家風によってグロリアナ領を堅実に治めてきた。

セレテス流炎剣術の継承者。一子相伝なので、ゼラが死んだら剣術も絶える。


性格はやや強情で、数年前に自分で育てた野菜を上流貴族の客に供したところ「痩せた土で育った貧乏くさい味」と馬鹿にされ、「嫌なら召し上がらなくて結構でございます」と言って皿を下げ父親にこっぴどく怒られた。

以来、気にいらない客に対しては問答無用で畑を手伝わせている。


◆初登場回:3章

◆シリーズの他の登場作品

   なし

付録◆アースフィア世界の度量衡


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◇長さの単位


基本単位はセスタセリオン。地域や職業によってセスタ尺とセリオン尺が使い分けられる。


1セスタ=2.5㎝

1セリオン=7.5㎝

1リセスタ(1リセリオン)=1/10セスタ(1/10セリオン)

1ニ―セスタ(1二―セリオン)=100セスタ(100セリオン)

1デセスタ(1デセリオン)=100ニーセスタ(100ニ―セリオン)

1クレッセスタ(1クレッセリオン)=10デセスタ(10デセリオン)


言語生命体たちが地球で創造主たちと暮らしていた時代、言語生命体の独立をかけた戦に異を唱え、地球人信仰を保つよう呼びかけた姉弟がいた。

姉の名はセスタ。弟の名はセリオン。

二人は同胞によって捕らえられ、両手をすりおろす拷問にかけられた。

救出されたとき、セスタの手首の関節より先の長さは2.5㎝、セリオンは7.5㎝しか残っていなかったと伝えられる。


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◇重さの単位


基本単位はケララ

ケララは麦をさす言葉だが、教会の伝統において典礼及び典礼聖歌を意味することもある。


1ケララ=2.5g

1リケララ=1/10ケララ

1ニーケララ=100ケララ

1デケララ=100ニーケララ

1クレスケララ=10デケララ


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◇体積の単位


基本体積はダータ。野蜜の意であり、血液ないし精液を暗喩する。


1ダータ=25ml

リダータ=1/10ダータ

ニーダータ=100ダータ

デダータ=100ニーダータ

クレスダータ=10デダータ

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