第165話 消滅
文字数 482文字
鬼の消滅と共に、桜花の張った結界も霧が晴れるように消えていく。
「桜花どの!」
隼人の声に現実に返ると、自分たちがいるのは藤音の部屋だった。
長い時間がたったかのように思えたが、こちらではほんの一時の出来事だったのだ。
終わった……。
そう思ったとたん、張りつめた糸が切れるように、桜花はその場にへたりこんだ。
「どうした、桜花 !?」
あわててのぞきこむ伊織の袖をつかみ、うっすらと笑ってみせる。
「平気よ。ただ、今まで夢中だったから、急に身体から力が抜けてしまって……」
話している途中で涙がこみあげてきて、桜花は伊織の胸でしゃくり上げた。
「本当はとても怖かった……そして哀しかった」
伊織は黙って桜花の背中を優しく撫で続ける。
先刻までの凛とした雰囲気は消え失せ、自分にしがみついて泣きじゃくる姿は、いつもの桜花だ。
隼人たちの方に眼を向けると、二人は無言で寄り添っていた。言葉など必要ない。隼人は壁にもたれ、藤音をしっかりと抱きしめている。
「桜花どの!」
隼人の声に現実に返ると、自分たちがいるのは藤音の部屋だった。
長い時間がたったかのように思えたが、こちらではほんの一時の出来事だったのだ。
終わった……。
そう思ったとたん、張りつめた糸が切れるように、桜花はその場にへたりこんだ。
「どうした、桜花 !?」
あわててのぞきこむ伊織の袖をつかみ、うっすらと笑ってみせる。
「平気よ。ただ、今まで夢中だったから、急に身体から力が抜けてしまって……」
話している途中で涙がこみあげてきて、桜花は伊織の胸でしゃくり上げた。
「本当はとても怖かった……そして哀しかった」
伊織は黙って桜花の背中を優しく撫で続ける。
先刻までの凛とした雰囲気は消え失せ、自分にしがみついて泣きじゃくる姿は、いつもの桜花だ。
隼人たちの方に眼を向けると、二人は無言で寄り添っていた。言葉など必要ない。隼人は壁にもたれ、藤音をしっかりと抱きしめている。