第63話 重圧
文字数 603文字
かといってここで説明を始めると、長くなりそうだ。
この件は祖父に任せよう、と桜花は思った。祖父も隠居の身で暇なので、喜んで伊織に講釈してくれるだろう。
「今度、時間のある時に天宮の屋敷に来てくれるかしら。おじいさまがいろいろ話してくれると思うわ。大切なことなのよ」
「よくわからんが、桜花がそう言うなら……」
しきりに首をひねる伊織をうながし、桜花は再び歩き出す。
二十分も歩いただろうか、砂浜のつきるところに巨大な岩が見えてきた。岩には上部に〆縄 がかけられ、その先は崖になっている。
「あの大岩か?」
ええ、と桜花はうなずき、すっと表情を引きしめる。
「俺にはただの岩にしか見えないが」
鬼は岩の中に封じられているはずなので、近くまで行ってみないことには状況がわからない。
だが、進むにつれ、桜花の足どりはどんどん遅くなっていった。
一歩ずつ、近づくごとに重圧感が増し、息苦しくなってくる。
昨日感じた、あの禍々しい「気」と同じ──。
少し先を歩いていた伊織も岩が近くなってくると、さすがに違和感を覚えた。あたりの空気が妙に重く、圧迫してくる感じなのだ。
それにどうした訳か、先ほどから妙に額が熱い。
何か大切なことを思い出せそうでいて、思い出せないもどかしさが伊織を包む。
この件は祖父に任せよう、と桜花は思った。祖父も隠居の身で暇なので、喜んで伊織に講釈してくれるだろう。
「今度、時間のある時に天宮の屋敷に来てくれるかしら。おじいさまがいろいろ話してくれると思うわ。大切なことなのよ」
「よくわからんが、桜花がそう言うなら……」
しきりに首をひねる伊織をうながし、桜花は再び歩き出す。
二十分も歩いただろうか、砂浜のつきるところに巨大な岩が見えてきた。岩には上部に〆
「あの大岩か?」
ええ、と桜花はうなずき、すっと表情を引きしめる。
「俺にはただの岩にしか見えないが」
鬼は岩の中に封じられているはずなので、近くまで行ってみないことには状況がわからない。
だが、進むにつれ、桜花の足どりはどんどん遅くなっていった。
一歩ずつ、近づくごとに重圧感が増し、息苦しくなってくる。
昨日感じた、あの禍々しい「気」と同じ──。
少し先を歩いていた伊織も岩が近くなってくると、さすがに違和感を覚えた。あたりの空気が妙に重く、圧迫してくる感じなのだ。
それにどうした訳か、先ほどから妙に額が熱い。
何か大切なことを思い出せそうでいて、思い出せないもどかしさが伊織を包む。