第176話 真の姿
文字数 470文字
「末裔 たちよ、わたくしを助けてくれたことに感謝します」
唖然として見つめる伊織に、女人は柔らかく微笑みかける。
「わたくしはかつて鬼を封じ、人となりて地上に降りた者。封印が弱まったのを知り、再びこの地に降りましたが、ひとたび人となって生を終え、転生した身にはもはや昔のような力はありませんでした。自分の身さえ守れずにいたところを、そなたたちに救われたのです」
伊織は驚きを禁じ得なかった。草むらで震えていた、あの小さな鳥が……。
「わたくしには力を回復する時間が必要でした。されど時を待っている間に鬼は解き放たれてしまいました」
眼を伏せ、憂いを浮かべていた天女はそこで顔を上げる。
「ですが、地上には破魔の力を受け継いだ末裔たちがおり、わたくしはそなたたちを通じて鬼の最期を見届けることができました。そして戦いの果て、この娘が重篤な状態にあるのも知っています」
ただ驚くばかりだった伊織は話が桜花に及ぶと、片膝をついて懇願した。
「どうか桜花を助けてください。人の力では救う術がないのです」
いくら呼びかけてみても、桜花の意識は戻らなかったのだ。
唖然として見つめる伊織に、女人は柔らかく微笑みかける。
「わたくしはかつて鬼を封じ、人となりて地上に降りた者。封印が弱まったのを知り、再びこの地に降りましたが、ひとたび人となって生を終え、転生した身にはもはや昔のような力はありませんでした。自分の身さえ守れずにいたところを、そなたたちに救われたのです」
伊織は驚きを禁じ得なかった。草むらで震えていた、あの小さな鳥が……。
「わたくしには力を回復する時間が必要でした。されど時を待っている間に鬼は解き放たれてしまいました」
眼を伏せ、憂いを浮かべていた天女はそこで顔を上げる。
「ですが、地上には破魔の力を受け継いだ末裔たちがおり、わたくしはそなたたちを通じて鬼の最期を見届けることができました。そして戦いの果て、この娘が重篤な状態にあるのも知っています」
ただ驚くばかりだった伊織は話が桜花に及ぶと、片膝をついて懇願した。
「どうか桜花を助けてください。人の力では救う術がないのです」
いくら呼びかけてみても、桜花の意識は戻らなかったのだ。