第134話 引き寄せあう闇
文字数 569文字
「わたくし自身が床に伏せていたため、ご報告が遅れたこと、お詫び申し上げます。鬼は人に憑りつき、今もこの館にひそんでおります。たとえばここ数日、体調を崩す者などは出ませんでしたでしょうか」
「言われてみれば、何人かが気分がすぐれぬと、薬師に診てもらっていたようですが……」
「人々の不調は、鬼の放つ瘴気のせいと思われます」
おそらく隼人は生来の明るさと芯の強さゆえに、負の影響を受けにくい性質 なのだろう。
こうやって話している間にも瘴気を──魔の気配を感じる。藤音の部屋の方角からだ。
「しかも鬼は理由はわかりませぬが、九条家に恨みをいだいております」
「九条家に?」
そうは言われても心当たりはまったくなく、隼人は困惑するばかりだ。
桜花は再び頭を下げた。
「それらのことすべて承知の上で、ご無礼をお許しください。どうか藤音さまにお会いさせてください」
「藤音に?」
隼人の表情がすっと引きしまる。
「つまり桜花どのは、藤音と鬼が関係あると?」
「恐れながら、さようでございます」
藤音は魅せられていた、封じの岩の中の鬼に。
引きよせあう心の闇。九条家への遺恨が拭い去れない藤音は、鬼にとって最もつけ入りやすい存在なのだ。
「言われてみれば、何人かが気分がすぐれぬと、薬師に診てもらっていたようですが……」
「人々の不調は、鬼の放つ瘴気のせいと思われます」
おそらく隼人は生来の明るさと芯の強さゆえに、負の影響を受けにくい
こうやって話している間にも瘴気を──魔の気配を感じる。藤音の部屋の方角からだ。
「しかも鬼は理由はわかりませぬが、九条家に恨みをいだいております」
「九条家に?」
そうは言われても心当たりはまったくなく、隼人は困惑するばかりだ。
桜花は再び頭を下げた。
「それらのことすべて承知の上で、ご無礼をお許しください。どうか藤音さまにお会いさせてください」
「藤音に?」
隼人の表情がすっと引きしまる。
「つまり桜花どのは、藤音と鬼が関係あると?」
「恐れながら、さようでございます」
藤音は魅せられていた、封じの岩の中の鬼に。
引きよせあう心の闇。九条家への遺恨が拭い去れない藤音は、鬼にとって最もつけ入りやすい存在なのだ。