第114話 衝撃
文字数 576文字
伊織はどう思っているのだろう。自分が兄に求婚されたことを。
知りたいのに確かめるのが怖くて、結局、話題は避けたままだ。
昨夜、ひっそりと館へ戻っていった藤音の様子も気がかりだった。
さらに封じの岩の鬼のこと。藤音があのように夜半に海辺をさまよったのも、鬼に魅入られたせいなのだ。
何とかしなくてはと思った、その時。
みゆが一声、鋭く鳴いた。
同時に、強烈な衝撃に襲われ、桜花は両手で胸元を押さえた。
心臓を鷲掴みにされたような苦しさ。身体中にのしかかってくる重圧感。眩暈 がして、息苦しさと共に吐き気までこみあげてくる。
みゆも異変を察知して、籠の中で羽をばたつかせている。
己の全身が引きちぎられるような感覚の中で桜花は知った。
封印が、破られたのだ──。
ふわっと遠のきそうな意識を、みゆの鋭い鳴き声が連れ戻す。桜花は額の汗をぬぐい、小鳥の方を見て安堵の息をついた。
「ああ、よかった。あなたは無事だったのね」
嵐のような不快感がいくぶん静まってくると、桜花は壁に手をついて立ち上がった。
これほど強大な妖気だ。影響を受けたのは自分だけではないはずだ。
祖父の身が心配で、そろそろと壁や襖を伝い歩きで部屋へと向かう。
知りたいのに確かめるのが怖くて、結局、話題は避けたままだ。
昨夜、ひっそりと館へ戻っていった藤音の様子も気がかりだった。
さらに封じの岩の鬼のこと。藤音があのように夜半に海辺をさまよったのも、鬼に魅入られたせいなのだ。
何とかしなくてはと思った、その時。
みゆが一声、鋭く鳴いた。
同時に、強烈な衝撃に襲われ、桜花は両手で胸元を押さえた。
心臓を鷲掴みにされたような苦しさ。身体中にのしかかってくる重圧感。
みゆも異変を察知して、籠の中で羽をばたつかせている。
己の全身が引きちぎられるような感覚の中で桜花は知った。
封印が、破られたのだ──。
ふわっと遠のきそうな意識を、みゆの鋭い鳴き声が連れ戻す。桜花は額の汗をぬぐい、小鳥の方を見て安堵の息をついた。
「ああ、よかった。あなたは無事だったのね」
嵐のような不快感がいくぶん静まってくると、桜花は壁に手をついて立ち上がった。
これほど強大な妖気だ。影響を受けたのは自分だけではないはずだ。
祖父の身が心配で、そろそろと壁や襖を伝い歩きで部屋へと向かう。