第53話 内なる眠り
文字数 501文字
だが、と祖父は話を続けた。
「古い記録には書き残されておる。何代か前の天宮の巫女の時じゃ。草薙に大きな内乱が起き、九条家は存亡の危機にあった。その時、反乱軍にいた魔道師を、破魔の者が封じたと」
桜花は唇を噛んだ。今は平穏であっても、またいつ魔の災いが降りかかってくるか、わからないということだ。
不安げにうつむく桜花に、祖父はふっと表情をなごませ、優しいまなざしをむける。
「あまり案ずるでない。そなたの持つ力はまだ内で眠っておるのじゃよ。いずれ何かのきっかけがあれば覚醒するであろう」
いつしか夜も深まっていた。祖父は下働きの者を呼び、用意した桜花の部屋に寝床の仕度をするように伝えた。
「今日は城下から歩いて来て疲れたであろう。早めに休みなさい。明日からは九条のお館へ出仕であろう?」
はい、と桜花はうなずき、
「わたしに何かできるかはわかりませんが、とにかく明日、お館からの帰りに鬼封じの岩の様子を見てまいります」
祖父は考え深げに相槌 を打った。
「そうじゃな。それがよかろう」
「古い記録には書き残されておる。何代か前の天宮の巫女の時じゃ。草薙に大きな内乱が起き、九条家は存亡の危機にあった。その時、反乱軍にいた魔道師を、破魔の者が封じたと」
桜花は唇を噛んだ。今は平穏であっても、またいつ魔の災いが降りかかってくるか、わからないということだ。
不安げにうつむく桜花に、祖父はふっと表情をなごませ、優しいまなざしをむける。
「あまり案ずるでない。そなたの持つ力はまだ内で眠っておるのじゃよ。いずれ何かのきっかけがあれば覚醒するであろう」
いつしか夜も深まっていた。祖父は下働きの者を呼び、用意した桜花の部屋に寝床の仕度をするように伝えた。
「今日は城下から歩いて来て疲れたであろう。早めに休みなさい。明日からは九条のお館へ出仕であろう?」
はい、と桜花はうなずき、
「わたしに何かできるかはわかりませんが、とにかく明日、お館からの帰りに鬼封じの岩の様子を見てまいります」
祖父は考え深げに
「そうじゃな。それがよかろう」