第35話 主に代わって
文字数 506文字
「これは、乳母どの」
「どうぞ如月とお呼びくださいませ。本日はお詫びとお願いがあってまいりました」
「藤音のことですね?」
いかにも、と答えながら、如月は桜花にちらりと視線を投げる。
如月の意を汲んで、桜花は席を外そうとするが、
「かまいません。桜花どのは信頼のおける方。ちょうど今、二人で藤音を心配して話していたところです」
「殿の仰せならば、そちらの巫女さまを信じましょう。ただしこの場で耳にしたことは他言無用に願います」
「は、はい」
如月の迫力に気圧されつつ、桜花は座っていた場所を空け、自分は脇に腰を降ろす。
「で、如月、今日は藤音が何か……」
隼人が話し終わらないうちに、如月は両手をつき、深々と頭 を垂れた。
「この度のわが主の所業、幾重にもお詫び申し上げます。お望みでしたら、主に代わって我が首、差し出しましょう。もっともこのような老女の首、欲しくもないでしょうが」
あまりに唐突な申し出に隼人もつい、
「確かに、欲しくはありませんが……」
などと、ぽろりと本音を口にしてしまう。
「どうぞ如月とお呼びくださいませ。本日はお詫びとお願いがあってまいりました」
「藤音のことですね?」
いかにも、と答えながら、如月は桜花にちらりと視線を投げる。
如月の意を汲んで、桜花は席を外そうとするが、
「かまいません。桜花どのは信頼のおける方。ちょうど今、二人で藤音を心配して話していたところです」
「殿の仰せならば、そちらの巫女さまを信じましょう。ただしこの場で耳にしたことは他言無用に願います」
「は、はい」
如月の迫力に気圧されつつ、桜花は座っていた場所を空け、自分は脇に腰を降ろす。
「で、如月、今日は藤音が何か……」
隼人が話し終わらないうちに、如月は両手をつき、深々と
「この度のわが主の所業、幾重にもお詫び申し上げます。お望みでしたら、主に代わって我が首、差し出しましょう。もっともこのような老女の首、欲しくもないでしょうが」
あまりに唐突な申し出に隼人もつい、
「確かに、欲しくはありませんが……」
などと、ぽろりと本音を口にしてしまう。