第48話 祖父
文字数 508文字
桜花の視線が縁側で涼んでいた老人に止まった。髪も髭も真っ白で、どこぞの深山の仙人のようだ。
「おじいさま!」
孫娘の弾んだ声に祖父が振り返る。
「おお、桜花か。よく来た」
両手を広げ、縁側から降りてくる祖父に、桜花もまた駆け寄っていく。
「久しぶりじゃな。しばらく会わないでいるうちに、ずいぶんと娘らしくなったのう」
眼を細めて自分を見つめる祖父に、桜花はくすぐったい気持ちで頬を染める。
「おじいさまは少しも変わりませんのね」
「そうでもないぞ。もう年じゃて、薬草の畑の手入れもしんどくなっておる。とにかく中に入りなさい。話はそこでゆっくりといたそうではないか」
勧められるまま桜花は祖父と一緒に屋敷に入った。海の見える座敷は、障子が開け放たれ、気持ちの良い風が入ってくる。
かつては草薙の神職を司る神官であった祖父も、すでに隠居の身だ。下働きの夫婦者に身の回りの世話を頼み、遠海の屋敷で静かに暮らしている。
そして。両親亡き今となっては、この祖父が桜花にとってただひとりの肉親となってしまったのだった。
「おじいさま!」
孫娘の弾んだ声に祖父が振り返る。
「おお、桜花か。よく来た」
両手を広げ、縁側から降りてくる祖父に、桜花もまた駆け寄っていく。
「久しぶりじゃな。しばらく会わないでいるうちに、ずいぶんと娘らしくなったのう」
眼を細めて自分を見つめる祖父に、桜花はくすぐったい気持ちで頬を染める。
「おじいさまは少しも変わりませんのね」
「そうでもないぞ。もう年じゃて、薬草の畑の手入れもしんどくなっておる。とにかく中に入りなさい。話はそこでゆっくりといたそうではないか」
勧められるまま桜花は祖父と一緒に屋敷に入った。海の見える座敷は、障子が開け放たれ、気持ちの良い風が入ってくる。
かつては草薙の神職を司る神官であった祖父も、すでに隠居の身だ。下働きの夫婦者に身の回りの世話を頼み、遠海の屋敷で静かに暮らしている。
そして。両親亡き今となっては、この祖父が桜花にとってただひとりの肉親となってしまったのだった。