第51話 鬼封じの岩
文字数 522文字
祖父は立ち上がり、庭に面した障子を開けると、西の方角に眼をやった。
とはいえ、夜の海は真っ暗で、ただ波音が響くばかりだ。
「この先の浜辺の西の突き当りに大きな岩があってな、中に鬼が封じこめられていると言われておる。いわば『鬼封じの岩』じゃ」
桜花は黙って祖父の話に耳を傾ける。
「いつの時代からか、鬼は封印されてきた。が、最近では時折、わしも禍々しい『気』を感じる時がある。歳月が過ぎ、封印の効力が弱まってきたのでは、と考えておる」
長い時の流れの中で、鬼は今も生き続け、甦る機会をうかがっているのだろうか。
「桜花」
「はい」
真摯な表情で祖父が自分を見つめ、桜花もまた居住まいを正して向かいあう。
「実はあの岩こそが、かつて天女が鬼を封じたものだと伝えられておる」
思いもよらない祖父の話に、桜花はただ驚くばかりだ。
「もしかして、おじいさまはその伝承があるゆえに遠海に住まわれたのですか?」
「いや、ここは静かなよい土地じゃ。が、多少はそれもある。とはいえ、わしは破魔 の者ではないので、鬼を封じるほどの力は持っておらんがな」
とはいえ、夜の海は真っ暗で、ただ波音が響くばかりだ。
「この先の浜辺の西の突き当りに大きな岩があってな、中に鬼が封じこめられていると言われておる。いわば『鬼封じの岩』じゃ」
桜花は黙って祖父の話に耳を傾ける。
「いつの時代からか、鬼は封印されてきた。が、最近では時折、わしも禍々しい『気』を感じる時がある。歳月が過ぎ、封印の効力が弱まってきたのでは、と考えておる」
長い時の流れの中で、鬼は今も生き続け、甦る機会をうかがっているのだろうか。
「桜花」
「はい」
真摯な表情で祖父が自分を見つめ、桜花もまた居住まいを正して向かいあう。
「実はあの岩こそが、かつて天女が鬼を封じたものだと伝えられておる」
思いもよらない祖父の話に、桜花はただ驚くばかりだ。
「もしかして、おじいさまはその伝承があるゆえに遠海に住まわれたのですか?」
「いや、ここは静かなよい土地じゃ。が、多少はそれもある。とはいえ、わしは