第155話 炎上する城
文字数 462文字
「されど刀が振り降ろされた時、我をかばってその身に刃を受けたのは唯姫だった」
──お父さま! 浅葱!
突如、飛びこんできた娘の姿に父の顔が歪む。が、勢いのついた刃は鈍い音をたてて唯姫の身体を貫いた。
──ごめんなさい、浅葱。わたくしには父を止められなかった。
必死に身を起こし、唯姫を腕に抱く。
しかし手のつけようがないほど姫の傷は深かった。
──でも、どうか信じて。あなたはわたくしの愛しい者。この命より大切な……。
──唯姫!
静かに閉じられた瞼はいくら呼びかけても二度と開くことはなかった。浅葱は冷たくなっていく唯姫を抱きしめ、吼えるように慟哭した。
「我が腕の中で唯姫は息絶えた。我は怒りに自分を忘れ、気がついた時には姫を抱いたまま、燃えさかる城の屍の山の中にいた」
炎上する城。いつか桜花が古文書で読んだ光景。
浅葱はすべてを呪った。
この世界を。九条家を。自分の中に流れる九条の血をも。
「九条家は滅びるはずだった。あの天女さえ邪魔をしなければ」
人々の嘆きの声を聞き、紅蓮に染まる上空から龍を従えて現れた天界の者。
──お父さま! 浅葱!
突如、飛びこんできた娘の姿に父の顔が歪む。が、勢いのついた刃は鈍い音をたてて唯姫の身体を貫いた。
──ごめんなさい、浅葱。わたくしには父を止められなかった。
必死に身を起こし、唯姫を腕に抱く。
しかし手のつけようがないほど姫の傷は深かった。
──でも、どうか信じて。あなたはわたくしの愛しい者。この命より大切な……。
──唯姫!
静かに閉じられた瞼はいくら呼びかけても二度と開くことはなかった。浅葱は冷たくなっていく唯姫を抱きしめ、吼えるように慟哭した。
「我が腕の中で唯姫は息絶えた。我は怒りに自分を忘れ、気がついた時には姫を抱いたまま、燃えさかる城の屍の山の中にいた」
炎上する城。いつか桜花が古文書で読んだ光景。
浅葱はすべてを呪った。
この世界を。九条家を。自分の中に流れる九条の血をも。
「九条家は滅びるはずだった。あの天女さえ邪魔をしなければ」
人々の嘆きの声を聞き、紅蓮に染まる上空から龍を従えて現れた天界の者。