第6話 領地争い
文字数 646文字
話は半年ほど前にさかのぼる。
隣国同士である草薙と白河は、長年に渡って領地をめぐって争ってきた。
草薙の先代の領主が病死し、まだ年若い嫡男が後を継ぐと、白河の領主である林宗久 は好機とばかり攻め込んできたのである。
「なに、相手は若造。しかも本ばかり読んでいて剣も弓もろくに扱えぬ軟弱者というではないか。今こそ長年の争い、この白河の勝利にて終わらせてみせようぞ」
しかし、宗久の読みは完全に外れた。
草薙の家臣たちの固い結束もさることながら、この剣も弓も苦手な少年・九条隼人は戦略に類まれな才能を発揮したのだ。
敗走すると見せかけ、湿地に誘い出し、身動きのとれなくなった白河の軍に、草薙の軍勢が一斉に襲いかかったのである。
地の利をいかし、深追いしてきた相手を逆手にとって反撃する。綿密に計算された見事な作戦だった。
大将である宗久はかろうじて城に逃げ帰り、和睦の使者を送った。
自分の首と引き換えに、一族と家臣たちの命を助けてくれるよう文をしたためるしか、術は残されていなかった。
住民たちは恐怖した。国境を超えていつ敵の軍勢が攻め寄せてくるかわからない。もはや白河の軍には迎え撃つ力は残されていない。
だが。おびえる人々をよそに、何日たっても草薙の軍は攻め込んではこなかった。それどころか国境いでの戦が終わると、さっさと自国へ引き上げてしまったのである。
隣国同士である草薙と白河は、長年に渡って領地をめぐって争ってきた。
草薙の先代の領主が病死し、まだ年若い嫡男が後を継ぐと、白河の領主である
「なに、相手は若造。しかも本ばかり読んでいて剣も弓もろくに扱えぬ軟弱者というではないか。今こそ長年の争い、この白河の勝利にて終わらせてみせようぞ」
しかし、宗久の読みは完全に外れた。
草薙の家臣たちの固い結束もさることながら、この剣も弓も苦手な少年・九条隼人は戦略に類まれな才能を発揮したのだ。
敗走すると見せかけ、湿地に誘い出し、身動きのとれなくなった白河の軍に、草薙の軍勢が一斉に襲いかかったのである。
地の利をいかし、深追いしてきた相手を逆手にとって反撃する。綿密に計算された見事な作戦だった。
大将である宗久はかろうじて城に逃げ帰り、和睦の使者を送った。
自分の首と引き換えに、一族と家臣たちの命を助けてくれるよう文をしたためるしか、術は残されていなかった。
住民たちは恐怖した。国境を超えていつ敵の軍勢が攻め寄せてくるかわからない。もはや白河の軍には迎え撃つ力は残されていない。
だが。おびえる人々をよそに、何日たっても草薙の軍は攻め込んではこなかった。それどころか国境いでの戦が終わると、さっさと自国へ引き上げてしまったのである。