第109話 ひたむきな問い
文字数 553文字
黙りこむ桜花を不思議に思い、そちらを向いた藤音は驚いて眼をみはった。
「なぜ、そなたが泣くの?」
言われて初めて気づいた。自分でも知らないうちに桜花の頬を涙が流れていた。
「どうしても、だめなのですか?」
頬に伝わる雫をぬぐおうともせず、桜花はさらに問いかける。
「お二人で、幸せにはなれないのですか?」
ひたむきな問いに藤音は答えられず、桜花から視線をそらした時、年配の男性の声が聞こえてきた。
「おや、お気がつかれましたかな」
桜花があわてて頬をこする。椀を手に、髪もひげも真っ白な老人が、ゆっくりした足取りでこちらへと歩いてくる。
老人は藤音の枕もとまで来ると、椀を置き、頭を下げた。
「奥方さまにはお初にお目にかかりますな。わたくしの名は十耶 。桜花の祖父でございます」
簡単に挨拶をすると、老人は再び椀を手に取る。
「これはわたくしの作った薬湯にございます。見た目も味も悪うございますが、効き目は保証つきですぞ。どうぞお飲みください」
桜花の手を借りて上半身を起こし、椀を受け取ると、藤音はまじまじと中味を見つめた。色は真っ黒で、薬草臭くて、見るからに……不味 そうだ。
「なぜ、そなたが泣くの?」
言われて初めて気づいた。自分でも知らないうちに桜花の頬を涙が流れていた。
「どうしても、だめなのですか?」
頬に伝わる雫をぬぐおうともせず、桜花はさらに問いかける。
「お二人で、幸せにはなれないのですか?」
ひたむきな問いに藤音は答えられず、桜花から視線をそらした時、年配の男性の声が聞こえてきた。
「おや、お気がつかれましたかな」
桜花があわてて頬をこする。椀を手に、髪もひげも真っ白な老人が、ゆっくりした足取りでこちらへと歩いてくる。
老人は藤音の枕もとまで来ると、椀を置き、頭を下げた。
「奥方さまにはお初にお目にかかりますな。わたくしの名は
簡単に挨拶をすると、老人は再び椀を手に取る。
「これはわたくしの作った薬湯にございます。見た目も味も悪うございますが、効き目は保証つきですぞ。どうぞお飲みください」
桜花の手を借りて上半身を起こし、椀を受け取ると、藤音はまじまじと中味を見つめた。色は真っ黒で、薬草臭くて、見るからに……