第184話 光へと
文字数 529文字
伊織は跳躍し、金色 に輝く刀で一気に異形の獣を切り裂いた。
一瞬の間の後に巨体がどさりと倒れ、断末魔の声を響かせながら消滅していく。
が、ほっとしたのも束の間、すぐさま別の獣が次々と姿を現す。これではきりがない。
「桜花、走れるか?」
ええ、とうなずく桜花の手を握り、伊織は洞窟の出口へと向かって走り出した。
桜花をかばいつつ、時に追ってくる獣を切り伏せ、ひたすら走る。
ここから出られたら、話したいことがたくさんある気がする。
何から話そう。みゆが天女の転生だと知ったら、桜花はさぞかし驚くだろう。
それから、ようやく心の通いあった隼人と藤音が、桜花の身をとても案じていること。
そして兄が求婚を取り下げに来てくれた件を伝えて、今度こそ自分がきちんと想いを形にしなくては。
前方にかすかに光が見えてくる。黄泉の境界だ。
この闇を抜ければ、守護石と天女が導いてくれる。
もう──離れない。
自分たちを隔てるものなど、何もない。
固く手を結んで二人は走り続ける。
光をめざして。現世 で共に生きてゆくために。
完
一瞬の間の後に巨体がどさりと倒れ、断末魔の声を響かせながら消滅していく。
が、ほっとしたのも束の間、すぐさま別の獣が次々と姿を現す。これではきりがない。
「桜花、走れるか?」
ええ、とうなずく桜花の手を握り、伊織は洞窟の出口へと向かって走り出した。
桜花をかばいつつ、時に追ってくる獣を切り伏せ、ひたすら走る。
ここから出られたら、話したいことがたくさんある気がする。
何から話そう。みゆが天女の転生だと知ったら、桜花はさぞかし驚くだろう。
それから、ようやく心の通いあった隼人と藤音が、桜花の身をとても案じていること。
そして兄が求婚を取り下げに来てくれた件を伝えて、今度こそ自分がきちんと想いを形にしなくては。
前方にかすかに光が見えてくる。黄泉の境界だ。
この闇を抜ければ、守護石と天女が導いてくれる。
もう──離れない。
自分たちを隔てるものなど、何もない。
固く手を結んで二人は走り続ける。
光をめざして。
完