第135話 異変
文字数 559文字
「確かに奥方さまは夜中に、封じの岩におひとりで行かれておいででした」
遠慮がちに伊織も口をはさむ。
「もしもわたくしの考えが間違っておりましたら、お咎めはいかようにもお受けいたします。何とぞ、藤音さまに会わせてくださいませ!」
桜花は固く心に決めていた。今度はもう一歩も引かない。これ以上、大切な人たちを誰も傷つけないために。
だからこそ、どうしても藤音に会って、自分の眼で確かめなくてはならないのだ。
とまどいつつも、わかりました、と隼人は答えた。
「桜花どのがそこまで言われるなら……。具合が良くないとのことで、わたしもここ数日は会っていないのですが、藤音の部屋まで行ってみましょう。また如月たちに阻まれるかもしれませんが」
隼人は立ち上がり、続いて桜花と伊織も立ち上がった。三人は広間を出て、藤音の部屋をめざして歩いていく。
しかし歩き出してほどなく、三人は奇妙な違和感を覚えていた。
おかしい……妙に静かだ。
廊下を歩いていても誰ひとりとして、すれ違わない。
この館には何十人もの人間がいるはずなのに、しんと静まり返り、まるで人の動く気配がしない。
そして異変は藤音の部屋まで来て決定的となった。
遠慮がちに伊織も口をはさむ。
「もしもわたくしの考えが間違っておりましたら、お咎めはいかようにもお受けいたします。何とぞ、藤音さまに会わせてくださいませ!」
桜花は固く心に決めていた。今度はもう一歩も引かない。これ以上、大切な人たちを誰も傷つけないために。
だからこそ、どうしても藤音に会って、自分の眼で確かめなくてはならないのだ。
とまどいつつも、わかりました、と隼人は答えた。
「桜花どのがそこまで言われるなら……。具合が良くないとのことで、わたしもここ数日は会っていないのですが、藤音の部屋まで行ってみましょう。また如月たちに阻まれるかもしれませんが」
隼人は立ち上がり、続いて桜花と伊織も立ち上がった。三人は広間を出て、藤音の部屋をめざして歩いていく。
しかし歩き出してほどなく、三人は奇妙な違和感を覚えていた。
おかしい……妙に静かだ。
廊下を歩いていても誰ひとりとして、すれ違わない。
この館には何十人もの人間がいるはずなのに、しんと静まり返り、まるで人の動く気配がしない。
そして異変は藤音の部屋まで来て決定的となった。