第115話 無力感
文字数 526文字
どうにかたどり着いた部屋の中では、危惧したように祖父が倒れていて、一時、自分の辛さも忘れて桜花は駆け寄った。
「おじいさま、しっかりなさってください!」
耳元で声をかける桜花に、祖父はうっすらと眼を開けた。
「おお、桜花か」
桜花の手を借り、ゆっくりと上半身を起こす。
「大丈夫じゃ。このような強い妖気、不意にくらったでな、防御もできなんだ。桜花、そなたは?」
「先ほどまでは呼吸もできないくらいでしたが、今は何とかおさまりました」
そうか、と祖父は桜花に支えられながら、肩で息をつく。
「桜花」
真剣なまなざしを向ける祖父に、桜花もまた真顔で視線を返す。
「これほど強力な妖気の源は、わかるな」
「はい」
確認など必要ない。祖父と桜花の結論は同じだ。
「わしのことは心配せんでよい。鬼封じの岩に急ぎなさい」
灰色の厚い雲の下、桜花は屋敷を出てひとり海辺を急いだ。とはいってもまだ走れるほどには回復していないので、歩くのがやっとなのだが。
封印が解かれてしまったのなら、行ったところで自分に何ができるのだろう。無力感が桜花を苛 なむ。
「おじいさま、しっかりなさってください!」
耳元で声をかける桜花に、祖父はうっすらと眼を開けた。
「おお、桜花か」
桜花の手を借り、ゆっくりと上半身を起こす。
「大丈夫じゃ。このような強い妖気、不意にくらったでな、防御もできなんだ。桜花、そなたは?」
「先ほどまでは呼吸もできないくらいでしたが、今は何とかおさまりました」
そうか、と祖父は桜花に支えられながら、肩で息をつく。
「桜花」
真剣なまなざしを向ける祖父に、桜花もまた真顔で視線を返す。
「これほど強力な妖気の源は、わかるな」
「はい」
確認など必要ない。祖父と桜花の結論は同じだ。
「わしのことは心配せんでよい。鬼封じの岩に急ぎなさい」
灰色の厚い雲の下、桜花は屋敷を出てひとり海辺を急いだ。とはいってもまだ走れるほどには回復していないので、歩くのがやっとなのだが。
封印が解かれてしまったのなら、行ったところで自分に何ができるのだろう。無力感が桜花を