第177話 守り抜く覚悟
文字数 488文字
天女は伊織の肩に手を置き、諭すように、
「そなたたちが力を尽くしても、目覚めなかったのも無理からぬこと。この娘の魂は今、現世と黄泉の境界にあるのです」
「黄泉の境界……」
伊織は茫然と天女の言の葉をなぞらえた。
桜花はそのような遠い所にいるというのか。
「境界とはどこにあるのですか。どうすればそこに行けるのですか」
「行くつもりですか」
「──はい」
強くうなずく伊織に、天女は形のいい眉をわずかにひそめ、
「確かにこの娘を助けるためには、境界まで行って魂を連れ戻さねばなりません。
ですが、生身の人間が行くにはあまりに危険な場所。そなた自身の命さえ危ういのですよ」
「ご懸念には及びません。桜花を救えるなら、この命など惜しくはありませぬゆえ」
天女の言う境界がいかなる所であろうと、桜花を守り抜く覚悟はできている。
伊織の意志が固いことを悟ると、天女は桜花の枕元に置かれた守護石を指さした。
「では、その守護石を持ってゆきなさい。そなたたちを導いてくれるはずです」
「そなたたちが力を尽くしても、目覚めなかったのも無理からぬこと。この娘の魂は今、現世と黄泉の境界にあるのです」
「黄泉の境界……」
伊織は茫然と天女の言の葉をなぞらえた。
桜花はそのような遠い所にいるというのか。
「境界とはどこにあるのですか。どうすればそこに行けるのですか」
「行くつもりですか」
「──はい」
強くうなずく伊織に、天女は形のいい眉をわずかにひそめ、
「確かにこの娘を助けるためには、境界まで行って魂を連れ戻さねばなりません。
ですが、生身の人間が行くにはあまりに危険な場所。そなた自身の命さえ危ういのですよ」
「ご懸念には及びません。桜花を救えるなら、この命など惜しくはありませぬゆえ」
天女の言う境界がいかなる所であろうと、桜花を守り抜く覚悟はできている。
伊織の意志が固いことを悟ると、天女は桜花の枕元に置かれた守護石を指さした。
「では、その守護石を持ってゆきなさい。そなたたちを導いてくれるはずです」