第148話 異端
文字数 535文字
玄関を上がると、ぼろ雑巾のように床に倒れこんだ。体中痣だらけで、石つぶてや棍棒で殴られた傷がずきずきと痛んだ。
──は……。
思わず唇から自嘲の笑みが洩れた。
決して人と関わってはならぬ。母の遺言はこういう意味だったのだ。
人々の中に入ろうとしたら拒絶され、迫害される現実がわかっていたのだ。
理由は簡単だ。自分が彼らとは違う──異端であるせいだ。鬼だからだ。
体も痛かったが、心はもっと痛かった。自嘲の笑いは低く、途切れがちに続き、最後には慟哭へと変わった。
自分を拒んだ世界には絶望したが、死にたいとは思わなかった。
母が与えてくれ、慈しみ、生涯かけて護ってくれた命だ。地を這いつくばってでも、生きてやろうと決意した。
そのうち浅葱は不思議な変化に気づいた。
感覚が研ぎ澄まされ、常人にはあり得ないほど動作が俊敏になった。
獣の眼を見て、動きを止められるようになっていた。相手を意のままに操る力。怪我をしてもすぐに治った。
母と共に暮らしていた頃は、外見以外、普通の人間とほとんど変わりなかった浅葱は、生きるために己の内の能力に目覚めたのである。
──は……。
思わず唇から自嘲の笑みが洩れた。
決して人と関わってはならぬ。母の遺言はこういう意味だったのだ。
人々の中に入ろうとしたら拒絶され、迫害される現実がわかっていたのだ。
理由は簡単だ。自分が彼らとは違う──異端であるせいだ。鬼だからだ。
体も痛かったが、心はもっと痛かった。自嘲の笑いは低く、途切れがちに続き、最後には慟哭へと変わった。
自分を拒んだ世界には絶望したが、死にたいとは思わなかった。
母が与えてくれ、慈しみ、生涯かけて護ってくれた命だ。地を這いつくばってでも、生きてやろうと決意した。
そのうち浅葱は不思議な変化に気づいた。
感覚が研ぎ澄まされ、常人にはあり得ないほど動作が俊敏になった。
獣の眼を見て、動きを止められるようになっていた。相手を意のままに操る力。怪我をしてもすぐに治った。
母と共に暮らしていた頃は、外見以外、普通の人間とほとんど変わりなかった浅葱は、生きるために己の内の能力に目覚めたのである。