第96話 鉄壁の防御
文字数 582文字
「殿といえども、強引な真似は許されませぬ。今日のところは、どうぞお引き取りくださいませ」
ぴしゃりと宣告され、結局、三人はとりつく島もなく追い返される羽目になる。
もっとも桜花は直接会えずとも、手がかりはつかめたのだが、今は黙ったまま心の内に秘めておく。
「いやはや、鉄壁の防御でございますな」
天を仰いで伊織が感心した声を出し、隼人も応じる。
「如月が男だったら、さぞ気骨ある武将になっていたでしょうね」
「さようですな」
二人は苦笑したが、すぐに顔から笑いは消えた。
「いずれにせよ、あらぬ噂は放ってはおけませぬ。事実を確かめなくては。今夜、自分がそれとなく藤音さまのご様子をうかがいましょう」
「わたくしも伊織どのを手伝います」
申し出る桜花の瞳に、強い意志が宿っているのを隼人は見て取った。
巫女である桜花は何かしら感じるところがあったのだろう。
隼人は伊織と桜花をじっと見つめてから、頼みます、と頭を下げた。
内密に隼人が用意してくれた部屋はちょうど藤音の居室のむかい、出入りがよく見える位置にあった。
早めに夕餉をすませ、桜花は祖父に今日は所用で遅くなると使いを出す。
これで準備は整い、後は藤音の様子を、言葉は悪いが──見張るだけだ。
ぴしゃりと宣告され、結局、三人はとりつく島もなく追い返される羽目になる。
もっとも桜花は直接会えずとも、手がかりはつかめたのだが、今は黙ったまま心の内に秘めておく。
「いやはや、鉄壁の防御でございますな」
天を仰いで伊織が感心した声を出し、隼人も応じる。
「如月が男だったら、さぞ気骨ある武将になっていたでしょうね」
「さようですな」
二人は苦笑したが、すぐに顔から笑いは消えた。
「いずれにせよ、あらぬ噂は放ってはおけませぬ。事実を確かめなくては。今夜、自分がそれとなく藤音さまのご様子をうかがいましょう」
「わたくしも伊織どのを手伝います」
申し出る桜花の瞳に、強い意志が宿っているのを隼人は見て取った。
巫女である桜花は何かしら感じるところがあったのだろう。
隼人は伊織と桜花をじっと見つめてから、頼みます、と頭を下げた。
内密に隼人が用意してくれた部屋はちょうど藤音の居室のむかい、出入りがよく見える位置にあった。
早めに夕餉をすませ、桜花は祖父に今日は所用で遅くなると使いを出す。
これで準備は整い、後は藤音の様子を、言葉は悪いが──見張るだけだ。