第2話 春の午後、舞う少女
文字数 512文字
穏やかな春の昼下がり。伊織 は彼の主 を探して城の庭を歩き回っていた。
「殿! どちらにおいでです !?」
呼びかけても返事はない。ただ小鳥のさえずりが聞こえるばかりだ。
草薙 の地を治める九条家。そこに仕える桐生 伊織は十八歳。髪を上で束ね、武人らしく腰には刀を差している。
と、木立の中に何か動く姿があって、伊織はそちらへ視線を向けた。
白い上着に紅袴、ひとつに結んだ長い髪。木洩れ日の中、巫女の衣装をまとった華奢な少女がひとり、熱心に舞っている。
それは彼の探し人ではなかったが、真剣な顔つきでひらりと身をひるがえす姿が愛らしく、思わず唇がほころぶ。
やがて人の気配に気づいたのか、少女は動きを止め、伊織の方を振り向いた。
「こんなところでどうしたの?」
親しみをこめて笑いかけてくる少女に伊織も鷹揚な笑顔で応じる。伊織とは幼馴染の少女はつい先日、彼と同じ数えで十八になったばかりだ。
「桜花 こそ、このような人目のないところで舞いの稽古か?」
胸に手を当てて大きな瞳の少女はうなずいた。
「ええ。今日は隼人 さまの婚礼の日ですもの。こっそりおさらいしていたの。わたしは巫女として舞いを奉納するのだから、とちったりしたら大変でしょう?」
「殿! どちらにおいでです !?」
呼びかけても返事はない。ただ小鳥のさえずりが聞こえるばかりだ。
と、木立の中に何か動く姿があって、伊織はそちらへ視線を向けた。
白い上着に紅袴、ひとつに結んだ長い髪。木洩れ日の中、巫女の衣装をまとった華奢な少女がひとり、熱心に舞っている。
それは彼の探し人ではなかったが、真剣な顔つきでひらりと身をひるがえす姿が愛らしく、思わず唇がほころぶ。
やがて人の気配に気づいたのか、少女は動きを止め、伊織の方を振り向いた。
「こんなところでどうしたの?」
親しみをこめて笑いかけてくる少女に伊織も鷹揚な笑顔で応じる。伊織とは幼馴染の少女はつい先日、彼と同じ数えで十八になったばかりだ。
「
胸に手を当てて大きな瞳の少女はうなずいた。
「ええ。今日は