第95話 居室へ
文字数 587文字
「最近は眠っていることが多いのですが、起きていれば会えるでしょう。行ってみますか?」
ぜひに、と桜花が答えると、隼人は立ち上がった。
「会えるかどうかはわかりませんが、藤音の部屋まで行ってみましょう」
伊織と桜花だけならまだしも、当主である隼人までが一緒では内密にというわけにはいかない。
仕方なく三人は何気ない顔をして廊下を進んでいく。
藤音の居室は館の西側、海が見渡せる景色のよい場所だった。真っ先に三人を見つけたのは如月だ。
「まあ、殿!」
「藤音の具合はどうです?」
如月はうなだれて首を横に振った。
「相変わらずでございます。お食事もあまり召し上がらず、うつらうつら眠ってばかり……」
「今は会えますか?」
如月はきっぱりと、いいえ、と言い放った。
「せっかくのお越し、申し訳ございませんが、藤音さまは今は眠っておいでです。お会いすることはかないませぬ」
先日、隼人に夜中の藤音の動向をたずねられ、自分が職務怠慢だと言われていると思ったのか、如月は、はなはだ機嫌が悪い。
「巫女さままで引き連れて、いったい何事です? 殿はあのような根も葉もない噂を本気で信じておられるのですか」
「別に、そういうわけではありませんが……」
如月が相手では隼人も分が悪い。
ぜひに、と桜花が答えると、隼人は立ち上がった。
「会えるかどうかはわかりませんが、藤音の部屋まで行ってみましょう」
伊織と桜花だけならまだしも、当主である隼人までが一緒では内密にというわけにはいかない。
仕方なく三人は何気ない顔をして廊下を進んでいく。
藤音の居室は館の西側、海が見渡せる景色のよい場所だった。真っ先に三人を見つけたのは如月だ。
「まあ、殿!」
「藤音の具合はどうです?」
如月はうなだれて首を横に振った。
「相変わらずでございます。お食事もあまり召し上がらず、うつらうつら眠ってばかり……」
「今は会えますか?」
如月はきっぱりと、いいえ、と言い放った。
「せっかくのお越し、申し訳ございませんが、藤音さまは今は眠っておいでです。お会いすることはかないませぬ」
先日、隼人に夜中の藤音の動向をたずねられ、自分が職務怠慢だと言われていると思ったのか、如月は、はなはだ機嫌が悪い。
「巫女さままで引き連れて、いったい何事です? 殿はあのような根も葉もない噂を本気で信じておられるのですか」
「別に、そういうわけではありませんが……」
如月が相手では隼人も分が悪い。