第71話 妖気
文字数 597文字
一方、和臣の隣で戻ってくる桜花を同じように迎えた伊織は、兄とは全く別のことを考えていた。
先日、鬼封じの岩に近づいて瘴気を浴びてしまった桜花を、屋敷まで送っていった時だ。
身体に変調をきたした桜花を抱きかかえるようにして屋敷に連れ帰ると、祖父は驚いて土間に飛び出してきた。
「桜花、いかがした !?」
満足に口もきけない桜花に代わって伊織が状況を説明すると、祖父は顎に手を当てて渋面を作った。
「よもや、そこまで妖気が強まっておろうとは……。そなたにはすまんことをしてしまった。今、薬湯を作るので、できるまで横になっていなさい」
下働きの者の妻を呼び、急ぎ床の用意をさせる。
桜花を寝かせつけると、祖父はたくさんの薬草が並べられた棚から、いくつかを選び出した。
「すまんが、伊織どの、これらの束を持っていただけるかな」
指示通りに薬草をかかえた伊織を従えて炊事場に入ると、祖父は大鍋に水を入れて火にかけた。
沸騰したところで火加減を弱め、伊織から受け取った薬草をぱらぱらと入れていく。
「ところで、伊織どのは大丈夫ですかな」
鍋から振り返る祖父に伊織はうなずいた。
「多少、不快感を覚えましたが、今は何ともありません」
「それはようござった。瘴気の受け方は人によって違いますゆえ」
先日、鬼封じの岩に近づいて瘴気を浴びてしまった桜花を、屋敷まで送っていった時だ。
身体に変調をきたした桜花を抱きかかえるようにして屋敷に連れ帰ると、祖父は驚いて土間に飛び出してきた。
「桜花、いかがした !?」
満足に口もきけない桜花に代わって伊織が状況を説明すると、祖父は顎に手を当てて渋面を作った。
「よもや、そこまで妖気が強まっておろうとは……。そなたにはすまんことをしてしまった。今、薬湯を作るので、できるまで横になっていなさい」
下働きの者の妻を呼び、急ぎ床の用意をさせる。
桜花を寝かせつけると、祖父はたくさんの薬草が並べられた棚から、いくつかを選び出した。
「すまんが、伊織どの、これらの束を持っていただけるかな」
指示通りに薬草をかかえた伊織を従えて炊事場に入ると、祖父は大鍋に水を入れて火にかけた。
沸騰したところで火加減を弱め、伊織から受け取った薬草をぱらぱらと入れていく。
「ところで、伊織どのは大丈夫ですかな」
鍋から振り返る祖父に伊織はうなずいた。
「多少、不快感を覚えましたが、今は何ともありません」
「それはようござった。瘴気の受け方は人によって違いますゆえ」