第54話 ごく普通に
文字数 476文字
遠海での最初の夜、床についても桜花はすぐには眠れなかった。
体は疲れているのだが、昼間に感じた不吉な「気」と、祖父の話が頭から離れないのだ。
鬼と思われる存在は、桜花の意識の中で、復讐、という言葉を使った。
いったい、誰に対する?
何のための?
断片的で、手がかりが少なすぎて、いくら考えてもわからない。
祖父は自分が魔を封じる者だと言ったが、とても信じられなかった。
何の自覚もないのに、破魔の者などと、いかめしい呼び名ばかりが先走り、自分を縛りつける気がする。
ふと伊織に会いたい、と思った。
伝承によれば破魔の者は一対。自分が魔を封じる者なら、その一対の相手は和臣か伊織か、どちらかひとりということになる。
でも、そんなことは関係なくて。
いつものように伊織と言葉を交わし、他愛のない話をして笑いあいたい。今までそうしてきたように、ごく普通の若者と娘として。
伊織の少し呑気で明るい笑顔を思い浮かべながら、桜花は眼を閉じた。
体は疲れているのだが、昼間に感じた不吉な「気」と、祖父の話が頭から離れないのだ。
鬼と思われる存在は、桜花の意識の中で、復讐、という言葉を使った。
いったい、誰に対する?
何のための?
断片的で、手がかりが少なすぎて、いくら考えてもわからない。
祖父は自分が魔を封じる者だと言ったが、とても信じられなかった。
何の自覚もないのに、破魔の者などと、いかめしい呼び名ばかりが先走り、自分を縛りつける気がする。
ふと伊織に会いたい、と思った。
伝承によれば破魔の者は一対。自分が魔を封じる者なら、その一対の相手は和臣か伊織か、どちらかひとりということになる。
でも、そんなことは関係なくて。
いつものように伊織と言葉を交わし、他愛のない話をして笑いあいたい。今までそうしてきたように、ごく普通の若者と娘として。
伊織の少し呑気で明るい笑顔を思い浮かべながら、桜花は眼を閉じた。