第130話 疑惑
文字数 588文字
桜花は急ぎ、館へと向かう。
近づくにつれ、疑惑は確信へと変わった。
間違いない。あの中に鬼がいるのだ。
門をくぐったところで伊織の姿が視界に入り、桜花はほっとした。まだ館では大きな異変は起きていないようだ。
よく見ると伊織は上着の下、首や腕に包帯があてがわれていて、桜花はぎゅっと唇を噛んだ。自分のせいだ。
伊織は桜花に気づくと、いつものように気さくな笑顔を向けてくる。
が、桜花はすまない気持ちでいっぱいで眼を伏せてしまう。
「体はもういいのか?」
「ええ、わたしは大丈夫。それより、伊織……」
申し訳なくて伊織の顔がまともに見られない。
「ごめんなさい。あなたを傷つけてしまったのは、わたしだわ」
「気にするな。この程度、かすり傷だ」
「和臣さまは……」
「兄上なら城下の屋敷に戻って療養中だが、命にかかわるような傷ではない」
それでも大怪我であることには変わりない。
うつむいたままの桜花に、伊織が静かな口調で告げる。
「兄上から伝言を頼まれている。今回のことは決して桜花のせいではない。非があるのは自分だと。だから桜花は気に病まないようにと」
伊織の言葉に少しだけ安堵して、桜花はようやく顔を上げた。
「ありがとう、伊織」
感謝をこめて瞳を見つめる。
近づくにつれ、疑惑は確信へと変わった。
間違いない。あの中に鬼がいるのだ。
門をくぐったところで伊織の姿が視界に入り、桜花はほっとした。まだ館では大きな異変は起きていないようだ。
よく見ると伊織は上着の下、首や腕に包帯があてがわれていて、桜花はぎゅっと唇を噛んだ。自分のせいだ。
伊織は桜花に気づくと、いつものように気さくな笑顔を向けてくる。
が、桜花はすまない気持ちでいっぱいで眼を伏せてしまう。
「体はもういいのか?」
「ええ、わたしは大丈夫。それより、伊織……」
申し訳なくて伊織の顔がまともに見られない。
「ごめんなさい。あなたを傷つけてしまったのは、わたしだわ」
「気にするな。この程度、かすり傷だ」
「和臣さまは……」
「兄上なら城下の屋敷に戻って療養中だが、命にかかわるような傷ではない」
それでも大怪我であることには変わりない。
うつむいたままの桜花に、伊織が静かな口調で告げる。
「兄上から伝言を頼まれている。今回のことは決して桜花のせいではない。非があるのは自分だと。だから桜花は気に病まないようにと」
伊織の言葉に少しだけ安堵して、桜花はようやく顔を上げた。
「ありがとう、伊織」
感謝をこめて瞳を見つめる。