第50話 情念
文字数 474文字
この屋敷も話が途切れると、潮騒が耳に届いてくる。遠く、あるいは近く、繰り返される波の音。
聞くともなく波音を聞いていると、桜花は昼間感じた不吉な気配を思い出した。
「桜花、いかがした?」
どう話そうか迷う桜花に、祖父が問いかけてくる。
「実は、こちらに来る時に、一瞬でしたが、不吉な『気』を感じました。おじいさまは心当たりがありませんでしょうか」
「不吉な『気』とな。どのようなものであった?」
「何か、狂おしい情念のようなもの……。わたしには、ここから出たい、と言っているように聞こえました。復讐はまだ終わっていない、とも」
「出たい、と言っておったか。それに復讐とは穏やかではないな」
腕組みをしたまま、祖父は考えこむ。
「そなたが申すのであれば事実であろう。桜花はこの地に残る、鬼封じの伝承を知っておるかな?」
身を縮めながら、桜花はいいえ、と返答する。
「まあ、前にここを訪れた時はそなたはまだ子供であったから、知らなくても仕方ないが」
聞くともなく波音を聞いていると、桜花は昼間感じた不吉な気配を思い出した。
「桜花、いかがした?」
どう話そうか迷う桜花に、祖父が問いかけてくる。
「実は、こちらに来る時に、一瞬でしたが、不吉な『気』を感じました。おじいさまは心当たりがありませんでしょうか」
「不吉な『気』とな。どのようなものであった?」
「何か、狂おしい情念のようなもの……。わたしには、ここから出たい、と言っているように聞こえました。復讐はまだ終わっていない、とも」
「出たい、と言っておったか。それに復讐とは穏やかではないな」
腕組みをしたまま、祖父は考えこむ。
「そなたが申すのであれば事実であろう。桜花はこの地に残る、鬼封じの伝承を知っておるかな?」
身を縮めながら、桜花はいいえ、と返答する。
「まあ、前にここを訪れた時はそなたはまだ子供であったから、知らなくても仕方ないが」