第47話 不吉な「気」
文字数 552文字
館のほど近くまで来て、桜花はひとり、人々とは別の方向へ足をむけた。行先は祖父の住んでいる天宮の屋敷だ。
向日葵 の咲く小道を抜け、自然と足が早くなる。懐かしい屋敷はもうすぐだ。
禍々 しい「気」を感じたのは、ちょうど道の先に屋敷が見えてきた時だった。
──出タイ。ココカラ出タイ! 復讐ハ、マダ終ワッテハイナイ!
息が止まるような胸苦しさを覚え、桜花は立ち止まった。心臓がどくんどくん早鐘を打っている。
確かに今、何かを欲してやまない、狂おしいまでの情念が通り過ぎていったのだ。
だが、それはほんの一瞬の出来事だった。
いくら注意深く様子をうかがってみても、あたりには波音が響き、海風が吹くばかりだ。
しばらくその場に立ちつくしていた桜花は、動悸が収まるのを待って、再び屋敷に向かってゆっくりと歩き出した。
祖父なら心当たりがあるかもしれない。後で話してみなくては。
小道の突き当り、古びた木戸をぎぃ、と音をたてて開ける。この木戸も子供の頃に来た時と変わらない。
平屋のこじんまりとした造り。庭から見える海。裏庭には祖父が栽培している薬草の畑。何もかもが昔のままだ。
──出タイ。ココカラ出タイ! 復讐ハ、マダ終ワッテハイナイ!
息が止まるような胸苦しさを覚え、桜花は立ち止まった。心臓がどくんどくん早鐘を打っている。
確かに今、何かを欲してやまない、狂おしいまでの情念が通り過ぎていったのだ。
だが、それはほんの一瞬の出来事だった。
いくら注意深く様子をうかがってみても、あたりには波音が響き、海風が吹くばかりだ。
しばらくその場に立ちつくしていた桜花は、動悸が収まるのを待って、再び屋敷に向かってゆっくりと歩き出した。
祖父なら心当たりがあるかもしれない。後で話してみなくては。
小道の突き当り、古びた木戸をぎぃ、と音をたてて開ける。この木戸も子供の頃に来た時と変わらない。
平屋のこじんまりとした造り。庭から見える海。裏庭には祖父が栽培している薬草の畑。何もかもが昔のままだ。