第102話 混乱
文字数 550文字
「桜花!」
とっさに飛び出した桜花を伊織が急いで追う。まただ。鬼の岩に近づくと、どうしてか額が灼けるように熱くなる。
腕をつかまれて、ゆっくりと藤音は振り返った。
「そなたは……」
桜花の必死な願いが通じたのか、虚ろだった瞳の焦点が合い、徐々に表情に生気が戻ってくる。
ひとつ大きく息を吸い込むと、藤音は正気を取り戻した。
「わたくしは、ここは……」
まばたきして周囲を見渡す。
「どうしてこのようなところに……」
なぜ自分がこんなところにいるのか、藤音自身にも記憶がなくて、混乱しているようだ。
「無礼者! 放しなさい!」
桜花に腕をつかまれているのに気づいて、振り払った刹那。
「あうっ……!」
割れるような痛みが走って、藤音は両手で自分の頭をおおった。
柾 が呼んでいた。確かに懐かしい弟の声だった。
応えなくては、あの声に……。
意識がふうっと遠のき、倒れこむ藤音を伊織が素早く抱き止める。
──オマエタチハ何者ダ!? 我ガ復讐ヲ邪魔ダテスル者ハ許サヌ!
風がざっと激しく吹き、憎悪に満ちた思念があたりに反響する。
復讐……以前にも聞き覚えのある言葉。
とっさに飛び出した桜花を伊織が急いで追う。まただ。鬼の岩に近づくと、どうしてか額が灼けるように熱くなる。
腕をつかまれて、ゆっくりと藤音は振り返った。
「そなたは……」
桜花の必死な願いが通じたのか、虚ろだった瞳の焦点が合い、徐々に表情に生気が戻ってくる。
ひとつ大きく息を吸い込むと、藤音は正気を取り戻した。
「わたくしは、ここは……」
まばたきして周囲を見渡す。
「どうしてこのようなところに……」
なぜ自分がこんなところにいるのか、藤音自身にも記憶がなくて、混乱しているようだ。
「無礼者! 放しなさい!」
桜花に腕をつかまれているのに気づいて、振り払った刹那。
「あうっ……!」
割れるような痛みが走って、藤音は両手で自分の頭をおおった。
応えなくては、あの声に……。
意識がふうっと遠のき、倒れこむ藤音を伊織が素早く抱き止める。
──オマエタチハ何者ダ!? 我ガ復讐ヲ邪魔ダテスル者ハ許サヌ!
風がざっと激しく吹き、憎悪に満ちた思念があたりに反響する。
復讐……以前にも聞き覚えのある言葉。