第154話 裏切り
文字数 518文字
「そんな……」
人間の身勝手な仕打ちに、桜花は手をぎゅっと握りしめる。
「ほどなくこの地にあった九条の城で酒宴が催された。表向きは今回の武勲をねぎらって、というものだったが、実は罠だった」
毒を盛られ、身動きできない浅葱は愕然としながら、声をふりしぼって問うた。
──なぜ、です?
九条辰人は床に這いつくばる浅葱に、冷やかな視線を投げた。
──悪く思うな。鬼などの手を借りたとあっては、外聞が良くなくてな。
──お約束が違います!
──約束だと? 唯姫のことか?
辰人はふん、と鼻で笑った。
──まさか本気で信じていたとはな。誰が化物などに大切な娘をやるものか。
辰人の本音に浅葱はようやく気がついた。自分は裏切られたのだ。
いや、この男は最初から、鬼である自分を捨て石にするつもりだったのかもしれない。
もう用はない、と辰人は容赦なく刀を抜く。
平常なら浅葱に単なる刀など効かない。だが今の毒で弱った体では致命傷となりうる。
浅葱は覚悟した。これが人間を信じた結果だ。利用された挙句、自分の命はここで尽きるのだ。
人間の身勝手な仕打ちに、桜花は手をぎゅっと握りしめる。
「ほどなくこの地にあった九条の城で酒宴が催された。表向きは今回の武勲をねぎらって、というものだったが、実は罠だった」
毒を盛られ、身動きできない浅葱は愕然としながら、声をふりしぼって問うた。
──なぜ、です?
九条辰人は床に這いつくばる浅葱に、冷やかな視線を投げた。
──悪く思うな。鬼などの手を借りたとあっては、外聞が良くなくてな。
──お約束が違います!
──約束だと? 唯姫のことか?
辰人はふん、と鼻で笑った。
──まさか本気で信じていたとはな。誰が化物などに大切な娘をやるものか。
辰人の本音に浅葱はようやく気がついた。自分は裏切られたのだ。
いや、この男は最初から、鬼である自分を捨て石にするつもりだったのかもしれない。
もう用はない、と辰人は容赦なく刀を抜く。
平常なら浅葱に単なる刀など効かない。だが今の毒で弱った体では致命傷となりうる。
浅葱は覚悟した。これが人間を信じた結果だ。利用された挙句、自分の命はここで尽きるのだ。