第97話 同じ瘴気
文字数 495文字
「あまり顔色が良くないな」
少しだけ開けた襖の隙間から二人でのぞきこんでいると、伊織が声をかけてくる。
「昨夜、あまりよく眠れなかったから……。たいしたことないわ」
「無理せずとも俺だけでよかったのに」
そう言う伊織に、桜花はいいえ、とかぶりを振った。
「確証はないから、隼人さまの前では黙っていたけれど。藤音さまの居室まで行った時、魔の残り香を感じたの。鬼封じの岩の瘴気と同じだった」
鬼封じの岩、と聞いて伊織の表情が動く。
「では、桜花は藤音さまがあの岩に行かれていると?」
「おそらく」
「だが、行く先があの岩なら、桜花は近づけないのではないか?」
先日の出来事を思い出して心配する伊織に、大丈夫よ、と笑ってみせる。
「この前は無防備に近づいたから、まともに瘴気を受けてしまったけれど。結界とまではいかなくても、おじいさまに魔除けのやり方を教えてもらったの。多少の時間なら持ちこたえられるわ」
話しながら、右手の二本の指で印を切る仕草をする。
実際、自分が行ってどうにかなるのか自信はまるでないのだが、それでも桜花は行かなくては、と心に決めていた。
隼人のためにも、藤音をこのまま放ってはおけない。
少しだけ開けた襖の隙間から二人でのぞきこんでいると、伊織が声をかけてくる。
「昨夜、あまりよく眠れなかったから……。たいしたことないわ」
「無理せずとも俺だけでよかったのに」
そう言う伊織に、桜花はいいえ、とかぶりを振った。
「確証はないから、隼人さまの前では黙っていたけれど。藤音さまの居室まで行った時、魔の残り香を感じたの。鬼封じの岩の瘴気と同じだった」
鬼封じの岩、と聞いて伊織の表情が動く。
「では、桜花は藤音さまがあの岩に行かれていると?」
「おそらく」
「だが、行く先があの岩なら、桜花は近づけないのではないか?」
先日の出来事を思い出して心配する伊織に、大丈夫よ、と笑ってみせる。
「この前は無防備に近づいたから、まともに瘴気を受けてしまったけれど。結界とまではいかなくても、おじいさまに魔除けのやり方を教えてもらったの。多少の時間なら持ちこたえられるわ」
話しながら、右手の二本の指で印を切る仕草をする。
実際、自分が行ってどうにかなるのか自信はまるでないのだが、それでも桜花は行かなくては、と心に決めていた。
隼人のためにも、藤音をこのまま放ってはおけない。