第7話 勝利

エピソード文字数 510文字

 さらに悲壮な決意をしたためた敗軍の将からの文に対しても、この戦乱の世では考えられないほど、返答は寛大なものだった
 いわく、大将の首など不要、領地も現状のままで結構、今後は争うことなく友好関係を保ちたいという内容だったのだ。
 自害する覚悟を決めていた宗久本人が拍子抜けしたほどである。
 あまりに寛容すぎる処遇に不満を抱いたのは、九条家の家臣たちの方だった。
「せっかく勝利したというのに、これでは何の意味もないではありませぬか」
「さようですぞ。今なら白河の領地、手中に収めることができますものを」
 憤慨する家臣たちをなだめつつ、隼人はあっさりと言ってのけた。
「これで長きにわたる戦が終わったのだから、よいではないか。領民たちもやっと安心して暮らせる。別にわたしは白河の領地が欲しくて戦ったわけではないし」
「殿は人がよすぎますぞ!」
 ことに不満を露わにしたのは、教育係として幼い頃からこの少年を育ててきた筆頭家老の結城和重(ゆうきかずしげ)だ。
「せっかく大勝利を収めたというのに、領地のひとつも増えないとは……」



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登場人物紹介

天宮桜花(あまみやおうか)


始祖が天女と言われる家系に生まれた巫女。

破魔の力を受け継ぐ可憐な少女。

大切な人たちを守るため、鬼と対峙していく。

桐生伊織(きりゅういおり)


始祖が龍であったと言われる家系に生まれる。桜花とは幼馴染。

桜花を想っているが、異母兄への遠慮もあり、口にできない。

九条隼人(くじょうはやと)


草薙の若き聡明な領主。趣味は学問と錬金術。

心優しい少年で藤音を案じているが、どう接してよいかわからず、気持ちを伝えられないでいる。

藤音(ふじね)


和睦の証として人質同然に嫁いできた姫。

隼人の誠実さに惹かれながらも、戦死した弟が忘れられず、心を閉ざしている。

鬼伝承が残る海辺の村で、いつしか魔に魅入られていく……。

浅葱(あさぎ)

愛しい姫を奪われた鬼。世を呪い、九条家に復讐を誓う。

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