第9話「よき話」
文字数 512文字
「今回の和睦とて、しばらくはおとなしくしていましょうが、軍を建て直せばまた戦をしかけてくるやもしれませぬ」
「何かこう、もっと強くこの和睦の証となるものがほしいところでございますな」
「だけど、和睦の証といっても、いったい何を……」
顎に手をやって隼人は考えこんだ。盟約というものに確たる証などありはしない。最終的には人と人の信頼でしかないだ。
城の大広間にしばし流れる沈黙。
その沈黙を破ったのは、またもや筆頭家老の結城だった。
「おお、そうだ、よき手だてがございます!」
隼人は警戒してわずかに眼を細めた。だいたい今まで結城の「よき話」などというものは、ろくな話であったためしがない。
「して、結城さま、よき手とは?」
周囲の者たちにうながされ、家老はごほんと咳払いをひとつした。
「縁組、でございますな」
「は?」
結城の言葉の意味がわからず、隼人はきょとんとした声を出した。
「白河の林宗久には娘がおります。確か年は数えで二十歳くらいかと。たいそう美しい姫君で、宗久が手放したがらずにこよなく慈しんでいるとか」
「何かこう、もっと強くこの和睦の証となるものがほしいところでございますな」
「だけど、和睦の証といっても、いったい何を……」
顎に手をやって隼人は考えこんだ。盟約というものに確たる証などありはしない。最終的には人と人の信頼でしかないだ。
城の大広間にしばし流れる沈黙。
その沈黙を破ったのは、またもや筆頭家老の結城だった。
「おお、そうだ、よき手だてがございます!」
隼人は警戒してわずかに眼を細めた。だいたい今まで結城の「よき話」などというものは、ろくな話であったためしがない。
「して、結城さま、よき手とは?」
周囲の者たちにうながされ、家老はごほんと咳払いをひとつした。
「縁組、でございますな」
「は?」
結城の言葉の意味がわからず、隼人はきょとんとした声を出した。
「白河の林宗久には娘がおります。確か年は数えで二十歳くらいかと。たいそう美しい姫君で、宗久が手放したがらずにこよなく慈しんでいるとか」