第125話 涙
文字数 545文字
桜花が意識を取り戻したのは、天宮の屋敷だった。見慣れた自分の部屋に寝かされ、枕もとには祖父の姿。
「おお、眼が覚めたか、桜花」
「おじいさま……」
「心配したぞ。そなたは丸一日眠っていたのだよ」
体が鉛のように重い。まぶたを開けているのさえ、しんどく感じられる。
「わたしは、どうして……」
まだ頭がぼんやりしていて状況がよくつかめない。
「伊織どのが意識のないそなたを連れて帰ってきた時は、まこと驚いたぞ」
──伊織。
その名に記憶が鮮明に甦る。
「伊織は !? 和臣さまの怪我はどうなのですか !?」
とっさに身を起こそうとして眩暈に襲われ、桜花はどさりと寝床に横たわった。
「これこれ、無茶をするでない。そなたを連れて来た時には伊織どのも傷だらけで、わしもあわてたが、幸い、傷はみな浅かった」
「和臣さまは……」
「うむ、和臣どのは肩から背にかけて深手を負ったが、命に別状はないとのことじゃ。今はまだ床についておられるそうだが」
横になったまま、桜花は両手で顔をおおった。つうっと涙が頬を伝い落ち、祖父が心配げにたずねてくる。
「いかがした、桜花? いったい何があったのじゃ」
「おお、眼が覚めたか、桜花」
「おじいさま……」
「心配したぞ。そなたは丸一日眠っていたのだよ」
体が鉛のように重い。まぶたを開けているのさえ、しんどく感じられる。
「わたしは、どうして……」
まだ頭がぼんやりしていて状況がよくつかめない。
「伊織どのが意識のないそなたを連れて帰ってきた時は、まこと驚いたぞ」
──伊織。
その名に記憶が鮮明に甦る。
「伊織は !? 和臣さまの怪我はどうなのですか !?」
とっさに身を起こそうとして眩暈に襲われ、桜花はどさりと寝床に横たわった。
「これこれ、無茶をするでない。そなたを連れて来た時には伊織どのも傷だらけで、わしもあわてたが、幸い、傷はみな浅かった」
「和臣さまは……」
「うむ、和臣どのは肩から背にかけて深手を負ったが、命に別状はないとのことじゃ。今はまだ床についておられるそうだが」
横になったまま、桜花は両手で顔をおおった。つうっと涙が頬を伝い落ち、祖父が心配げにたずねてくる。
「いかがした、桜花? いったい何があったのじゃ」