第137話 逆刃
文字数 576文字
が、妖気が桜花と伊織に浴びせられようとした瞬間。桜花の胸もとが金色に輝き、藤音の放った黒い気は霧消した。
「!」
驚いたように藤音の眼が見開かれ、桜花は急いで懐から天河石を取り出す。
「なるほど……守護石か。小賢しいものを持っておる」
藤音の唇からこぼれた声は彼女のものではなかった。低い、魅惑的でさえある男の声。
隼人は眼前の出来事がまだ信じられない思いだった。藤音が鬼に魅入られている……桜花が必死に訴えていたことは真実だったのだ。
「ならば、これはどうかな」
藤音の姿を借りた鬼は指をぱちっと弾く。
と、庭で倒れていた者たちがゆらりと立ち上がった。館の護衛の者たちだ。
彼らは殺気をみなぎらせて刀を抜き、こちらに向かって近づいてくる。
「桜花、隼人さまを頼む!」
言い残して、伊織が二人を守るように前に出る。
「伊織、あの人たちは……」
ただ鬼に操られているだけ、と言おうとする桜花に、わかっている、という風にうなずいてみせる。
伊織は抜いた刀を反転させ、逆刃 に握り直した。
たとえこちらが不利になるとしても、操られている彼らを斬るわけにはいかない。
真っ先に斬りつけてくる相手の刃を寸前で避け、逆刃で背を打ちつける。
「!」
驚いたように藤音の眼が見開かれ、桜花は急いで懐から天河石を取り出す。
「なるほど……守護石か。小賢しいものを持っておる」
藤音の唇からこぼれた声は彼女のものではなかった。低い、魅惑的でさえある男の声。
隼人は眼前の出来事がまだ信じられない思いだった。藤音が鬼に魅入られている……桜花が必死に訴えていたことは真実だったのだ。
「ならば、これはどうかな」
藤音の姿を借りた鬼は指をぱちっと弾く。
と、庭で倒れていた者たちがゆらりと立ち上がった。館の護衛の者たちだ。
彼らは殺気をみなぎらせて刀を抜き、こちらに向かって近づいてくる。
「桜花、隼人さまを頼む!」
言い残して、伊織が二人を守るように前に出る。
「伊織、あの人たちは……」
ただ鬼に操られているだけ、と言おうとする桜花に、わかっている、という風にうなずいてみせる。
伊織は抜いた刀を反転させ、
たとえこちらが不利になるとしても、操られている彼らを斬るわけにはいかない。
真っ先に斬りつけてくる相手の刃を寸前で避け、逆刃で背を打ちつける。