第11話 縁組
文字数 477文字
とはいえ、本人の意向を無視して話はどんどん進んでいこうとしている。
「すべては国のため、領民のためですぞ!」
それが結城の最大の切り札だった。だてに教育係として長年育ててきたわけではない。隼人の落としどころを実によく心得てい る。
かくして、家老の策略にはまった年若い当主は、隣国から花嫁を迎えることに相成ったのだった。
回想から現実に戻ると、隼人はまたもやため息をついた。今日、幾度目かわからないほどである。
伊織も桜花も何と言ってよいかわからず、ただ黙って見つめるのみだ。
「わたしはまだしも、人質同然に嫁いでくる藤音姫が気の毒で……」
そんなつぶやきに、桜花がかすかに眉根を寄せて問いかける。
「隼人さまもご家老さまたちと同じように、藤音さまを人質などとお考えなのですか?」
まさか、と隼人は大きく かぶりを振った。
「決してそんな風には考えていません。しかし、この城の多くの者、そして何より藤音姫自身がそう思っているのではないかと……」
「すべては国のため、領民のためですぞ!」
それが結城の最大の切り札だった。だてに教育係として長年育ててきたわけではない。隼人の落としどころを実によく心得てい る。
かくして、家老の策略にはまった年若い当主は、隣国から花嫁を迎えることに相成ったのだった。
回想から現実に戻ると、隼人はまたもやため息をついた。今日、幾度目かわからないほどである。
伊織も桜花も何と言ってよいかわからず、ただ黙って見つめるのみだ。
「わたしはまだしも、人質同然に嫁いでくる藤音姫が気の毒で……」
そんなつぶやきに、桜花がかすかに眉根を寄せて問いかける。
「隼人さまもご家老さまたちと同じように、藤音さまを人質などとお考えなのですか?」
まさか、と隼人は大きく かぶりを振った。
「決してそんな風には考えていません。しかし、この城の多くの者、そして何より藤音姫自身がそう思っているのではないかと……」