第133話 桜花の断言
文字数 544文字
「伊織、あなたはここにいて。あなたにも関係あることだから」
引き止められ、再び腰を降ろす。
桜花は懐の守護石にそっとふれた。この石が教えてくれた。伊織は龍の血を継ぐ破魔の者だ。きっと鬼を倒す力になってくれるはずだ。
三人だけになった広間で改めて隼人がたずねてくる。
「いかがしました、桜花どの? わざわざ人払いまでして」
桜花は慎重に言葉を選んで、しかしはっきりと話し出した。
「まずはご報告しなければなりません。封じの岩が破壊され、鬼が解き放たれました」
「鬼が?」
隼人は当惑した声を出す。
「言い伝えは知っていますが、鬼などというものが本当に存在するのですか?」
隼人は南蛮の学問にも通じた現実主義者だ。伝承は尊重するが、自身は信じてはいない。真に恐ろしいのは生きた人間、という考えの持ち主だ。
かといって決して頑なではない。桜花の真摯な言葉を受け入れる柔軟さをも持ちあわせている。
「はい。信じられないかもしれませんが、確かに鬼は存在いたします」
きっぱりと桜花は断言した。