第38話 本当の原因
文字数 504文字
幼かった藤音を思い起こしながら、ただ……、と如月は言いよどんだ。
「ただ?」
「藤音さまは情深く一途な方。慈しんできた弟御を亡くされ、まだその悲しみが癒えておりません。ご自分の運命を受け入れることができずにおられます」
如月は懐剣を前に置き、再び頭を下げた。
「その上でお願い申し上げます。何とぞ藤音さまをお助けくださいませ!」
もはや矜持も世間体もない。藤音のためなら、頭などいくらでも下げる覚悟である。
如月の切なる願いは、隼人とて同じ想いだった。
「もちろんわたしに出来ることなら何でもしますが、どうすれば……」
「まずはもっと腕のいい薬師を……」
「そうは申されても、藤音を診た薬師はこの国でも随一との評判。それに如月、あなたも気づいているでしょう。藤音の病の本当の原因は身体より心にあると」
「仰せの通りにございます。正直、藤音さまをお育てしたこの如月も、どうしてよいものやらわからずにおります」
「ひとつ、よい案があります。効果のほどはやってみないとわかりませんが、桜花どのが考えてくれました」
「ただ?」
「藤音さまは情深く一途な方。慈しんできた弟御を亡くされ、まだその悲しみが癒えておりません。ご自分の運命を受け入れることができずにおられます」
如月は懐剣を前に置き、再び頭を下げた。
「その上でお願い申し上げます。何とぞ藤音さまをお助けくださいませ!」
もはや矜持も世間体もない。藤音のためなら、頭などいくらでも下げる覚悟である。
如月の切なる願いは、隼人とて同じ想いだった。
「もちろんわたしに出来ることなら何でもしますが、どうすれば……」
「まずはもっと腕のいい薬師を……」
「そうは申されても、藤音を診た薬師はこの国でも随一との評判。それに如月、あなたも気づいているでしょう。藤音の病の本当の原因は身体より心にあると」
「仰せの通りにございます。正直、藤音さまをお育てしたこの如月も、どうしてよいものやらわからずにおります」
「ひとつ、よい案があります。効果のほどはやってみないとわかりませんが、桜花どのが考えてくれました」