第127話 天河石(てんがせき)
文字数 656文字
桜花の母、花乃が亡くなった時、十耶は預かりものをしていた。桜花がもう少し成長したら渡そうと思って、うかつにも今まで持ったままになっていたのだ。
十耶は桜花の枕もとから静かに立ち上がった。
「そなたに渡したいものがある。わしの部屋にあって、すぐに取ってくるでな、待っていなさい」
祖父の言う渡したいものとは見当もつかなかったが、桜花は床の中で小さくうなずく。
ほどなく戻ってきた祖父は手に、布に包まれたものを持っていた。
再び桜花の枕もとに座ると布をほどき、中身を示して見せる。それは楕円形をした小さな石で、空の青を映したような美しい色をしている。
「その石は?」
「持ってみるといい」
言われるまま、手のひらに乗せてみると。
高い、澄んだ音がして、桜花の手の中で石がぽうっと淡く輝いた。
「これは天河石 といって、代々天宮家に受け継がれてきた守護石じゃ。本来ならそなたの母が亡くなった時に継承されるはずじゃった。だが、そなたはまだ幼かったのでな、このじいが預かっておった」
座ったまま、祖父は桜花にむかって深く首 を垂れた。
「もっと早くに渡すべきじゃった。すまなかった」
隠居してから十耶はずっと遠海に住み、桜花とは離れて暮らしていた。十耶にとって桜花は、いつまでも小さな子供のような気がしていたのだ。
「いいえ、おじいさまは何も悪くありませんわ。どうかお顔を上げてください」
十耶は桜花の枕もとから静かに立ち上がった。
「そなたに渡したいものがある。わしの部屋にあって、すぐに取ってくるでな、待っていなさい」
祖父の言う渡したいものとは見当もつかなかったが、桜花は床の中で小さくうなずく。
ほどなく戻ってきた祖父は手に、布に包まれたものを持っていた。
再び桜花の枕もとに座ると布をほどき、中身を示して見せる。それは楕円形をした小さな石で、空の青を映したような美しい色をしている。
「その石は?」
「持ってみるといい」
言われるまま、手のひらに乗せてみると。
高い、澄んだ音がして、桜花の手の中で石がぽうっと淡く輝いた。
「これは
座ったまま、祖父は桜花にむかって深く
「もっと早くに渡すべきじゃった。すまなかった」
隠居してから十耶はずっと遠海に住み、桜花とは離れて暮らしていた。十耶にとって桜花は、いつまでも小さな子供のような気がしていたのだ。
「いいえ、おじいさまは何も悪くありませんわ。どうかお顔を上げてください」