第174話 片恋の終わり
文字数 505文字
「あの、兄上」
部屋を出ようとした和臣は振り返る。
「何だ?」
「隼人さまと藤音さまは、どうされておいででしょうか」
倒れた桜花と共に天宮の屋敷に移ってしまったので、隼人たちがどうなったのか、ずっと気がかりだったのだ。
「藤音さまはまだお身体が本調子ではなくて、寝たり起きたりという感じだが、徐々に快方にむかわれているようだ。今は隼人さまがそばについておられる」
仲睦まじい二人の姿を想像して、伊織はかすかに笑みを浮かべた。
「もう大丈夫だ。如月どのも言っていた。とても似合いの夫婦 だと」
長い長い回り道をして、二人はようやく心が通じあったのだ。
去り際、和臣は桜花をもう一度見つめ、
「隼人さまも藤音さまも心配されておられます。桜花どの、早くお元気になられてください」
そして万感の想いをこめたまなざしを伊織に向け、
「桜花どのを頼む」
片恋の終わりだった。和臣が静かに部屋を出ていくと、伊織は桜花の耳にかかる髪を撫でながら話しかけた。
「聞こえたか? 兄上が求婚を取り下げに来てくれたぞ」
部屋を出ようとした和臣は振り返る。
「何だ?」
「隼人さまと藤音さまは、どうされておいででしょうか」
倒れた桜花と共に天宮の屋敷に移ってしまったので、隼人たちがどうなったのか、ずっと気がかりだったのだ。
「藤音さまはまだお身体が本調子ではなくて、寝たり起きたりという感じだが、徐々に快方にむかわれているようだ。今は隼人さまがそばについておられる」
仲睦まじい二人の姿を想像して、伊織はかすかに笑みを浮かべた。
「もう大丈夫だ。如月どのも言っていた。とても似合いの
長い長い回り道をして、二人はようやく心が通じあったのだ。
去り際、和臣は桜花をもう一度見つめ、
「隼人さまも藤音さまも心配されておられます。桜花どの、早くお元気になられてください」
そして万感の想いをこめたまなざしを伊織に向け、
「桜花どのを頼む」
片恋の終わりだった。和臣が静かに部屋を出ていくと、伊織は桜花の耳にかかる髪を撫でながら話しかけた。
「聞こえたか? 兄上が求婚を取り下げに来てくれたぞ」