第166話 解けた呪縛
文字数 575文字
鬼の呪縛が解けたのだろう、館のあちこちで人の声や物音が聞こえてくる。
部屋の中で真っ先に眼を覚ましたのは如月だった。
如月は額に手を当て、二、三度、軽く頭を振ると、あたりの惨憺たる様子に唖然とした。
「あらあら、いったい何事です、このありさまは。盗賊でも押し入ってきましたの?」
言われて部屋の中を見渡せば。
伊織が派手に立ち回りをやったせいもあって、襖は外れ、障子は破れ、調度品もひっくり返り、要するにめちゃくちゃになっているのだ。
桜花を腕に抱いたまま、伊織は苦笑交じりに答えた。
「盗賊ではありませんが、あえて言うなら鬼退治をしたのですよ、如月どの」
「何ですって?」
如月はさっぱりわけがわからないといった顔をする。
そんな説明の仕方では、まるでおとぎ話のようだと思ったが、桜花は何も言わずにおいた。
本当に浅葱の魂を救ったのは、自分たちではなく唯姫なのだから。
如月は口もとに手をやって、うっほん、と咳払いをする。
「お二組とも仲睦まじいのは結構ですが、まだ陽も高うございます。時と場所をお考えなさいませ」
改めて自分たちの姿を見ると。それぞれに人目もはばからず、抱きあう形になっていて、四人は赤くなってぱっと身を離す。
部屋の中で真っ先に眼を覚ましたのは如月だった。
如月は額に手を当て、二、三度、軽く頭を振ると、あたりの惨憺たる様子に唖然とした。
「あらあら、いったい何事です、このありさまは。盗賊でも押し入ってきましたの?」
言われて部屋の中を見渡せば。
伊織が派手に立ち回りをやったせいもあって、襖は外れ、障子は破れ、調度品もひっくり返り、要するにめちゃくちゃになっているのだ。
桜花を腕に抱いたまま、伊織は苦笑交じりに答えた。
「盗賊ではありませんが、あえて言うなら鬼退治をしたのですよ、如月どの」
「何ですって?」
如月はさっぱりわけがわからないといった顔をする。
そんな説明の仕方では、まるでおとぎ話のようだと思ったが、桜花は何も言わずにおいた。
本当に浅葱の魂を救ったのは、自分たちではなく唯姫なのだから。
如月は口もとに手をやって、うっほん、と咳払いをする。
「お二組とも仲睦まじいのは結構ですが、まだ陽も高うございます。時と場所をお考えなさいませ」
改めて自分たちの姿を見ると。それぞれに人目もはばからず、抱きあう形になっていて、四人は赤くなってぱっと身を離す。