第10話 和睦の証
文字数 564文字
広間にいる人々の注目を集めながら、さらに結城は続ける。
「草薙の当主と白河当主のご息女の縁組なら、この度の和睦の確たる証となりましょう」
「なるほど、その手がありましたか」
感心する家臣たちをよそに、思いがけない成り行きにあわてふためいたのは隼人である。
「ち、ちょっと待った。何もそこまでしなくても……」
「いや、これは実によき考えですぞ。さすがご家老」
「だが、わたしはまだ嫁をもらう気など……」
「何を言われますか! もう殿も家督を継がれた身、いつまでもおひとりでおられずに、きちんと奥方を迎えねば!」
「しかし相手の姫の方がわたしより年上だし……」
「たかが三歳くらいの年の差など、些細なことではありませぬか」
隼人は救いを求めるように年若い家臣たちを見たが、彼らは同情しつつも、古株に逆らってまでは助け舟が出せないでいる。
「それとも殿はどなたか好いた娘御がおありかな」
「別に、そういうわけではないけれど」
「なに、ご正室とはあくまで表向き。気に入った娘がおれば側室にでもなさればよろしい」
「そのようなあざといこと……」
隼人は唇を引き結んだ。この生真面目な少年には、そんな考え方は到底、容認できるものではない。
「草薙の当主と白河当主のご息女の縁組なら、この度の和睦の確たる証となりましょう」
「なるほど、その手がありましたか」
感心する家臣たちをよそに、思いがけない成り行きにあわてふためいたのは隼人である。
「ち、ちょっと待った。何もそこまでしなくても……」
「いや、これは実によき考えですぞ。さすがご家老」
「だが、わたしはまだ嫁をもらう気など……」
「何を言われますか! もう殿も家督を継がれた身、いつまでもおひとりでおられずに、きちんと奥方を迎えねば!」
「しかし相手の姫の方がわたしより年上だし……」
「たかが三歳くらいの年の差など、些細なことではありませぬか」
隼人は救いを求めるように年若い家臣たちを見たが、彼らは同情しつつも、古株に逆らってまでは助け舟が出せないでいる。
「それとも殿はどなたか好いた娘御がおありかな」
「別に、そういうわけではないけれど」
「なに、ご正室とはあくまで表向き。気に入った娘がおれば側室にでもなさればよろしい」
「そのようなあざといこと……」
隼人は唇を引き結んだ。この生真面目な少年には、そんな考え方は到底、容認できるものではない。