第84話 鳥籠
文字数 522文字
あたふたと入ってくる桜花に、祖父が呑気に声をかけてくる。
「おお、桜花」
「ただいま戻りました」
「おや、その手の中のものは何じゃ?」
「小鳥です。傷ついて弱っていたところを見つけました。どこかに空いた鳥籠はありませんでしょうか」
「確か、西側の使っていない部屋のどこかにあったはずじゃが」
「では探してまいります」
待ちなさい、と祖父が止めに入る。
「そなたはまだ履物も脱いでいないではないか。何をあわてておる。どれ、小鳥はわしに寄こしなさい。鳥籠は下働きの者に探させよう。まずはきちんと上がりなさい」
「は、はい」
小鳥を祖父の手に渡して、桜花は草履を脱ぎ、そろえて置く。
安心だと感じているのだろう、小鳥は祖父の手の中でもおとなしく包まれている。
「それと、お願いがございます。浜辺に住む漁師の子供が、鬼封じの岩の瘴気を浴びて苦しんでおります。
熱は下げることができましたが、まだしばらくは体調は回復しないはず。
後ほど家の者が取りに来ると思いますので、おじいさまに薬草の調合をしていただきたいのですが……」
「そのくらいなら造作もないこと。この年寄りでもまだまだ人の役に立てるというものじゃ」
預かった小鳥を手に祖父が軽く笑うと、桜花はほっと息をついた。
「おお、桜花」
「ただいま戻りました」
「おや、その手の中のものは何じゃ?」
「小鳥です。傷ついて弱っていたところを見つけました。どこかに空いた鳥籠はありませんでしょうか」
「確か、西側の使っていない部屋のどこかにあったはずじゃが」
「では探してまいります」
待ちなさい、と祖父が止めに入る。
「そなたはまだ履物も脱いでいないではないか。何をあわてておる。どれ、小鳥はわしに寄こしなさい。鳥籠は下働きの者に探させよう。まずはきちんと上がりなさい」
「は、はい」
小鳥を祖父の手に渡して、桜花は草履を脱ぎ、そろえて置く。
安心だと感じているのだろう、小鳥は祖父の手の中でもおとなしく包まれている。
「それと、お願いがございます。浜辺に住む漁師の子供が、鬼封じの岩の瘴気を浴びて苦しんでおります。
熱は下げることができましたが、まだしばらくは体調は回復しないはず。
後ほど家の者が取りに来ると思いますので、おじいさまに薬草の調合をしていただきたいのですが……」
「そのくらいなら造作もないこと。この年寄りでもまだまだ人の役に立てるというものじゃ」
預かった小鳥を手に祖父が軽く笑うと、桜花はほっと息をついた。