第44話 似たもの同士
文字数 460文字
元服をすませると、伊織はほどなく城に上がった。和臣は城下の屋敷から通っているが、伊織はもう何年も城住まいである。もっともその方が気楽だと本人も言っているのだが。
桜花はそんなことをつらつらと考えながら、全く別の話題を口にした。
「明日はもう遠海に出発よ。仕度はできたの?」
これからだ、と伊織はあっさり答える。
「ちゃんと用意しておかないと、当日になってあわてるわよ」
「かまわん。どうせたいしたものは持っていないのだから」
「わたしと同じようなことを言うのね」
「桜花もか? はは……ないもの同士というわけか」
がやがやと明日の準備で忙しい城内で、伊織が呑気に笑った。
一方、勤めを終えて家に帰るなり、和臣は母の姿を探した。今日こそは釘をさしてやらねば。
探すまでもなく、すぐに霧江は顔を見せた。
「お帰りなさい、和臣」
「ただいま戻りました」
挨拶を交わし、刀を母に預けると、間髪入れず和臣は抗議めいた口調で言った。
「母上、いい加減にしてください」
刀をしまっていた霧江は何のことかわからずに、怪訝 そうな顔で和臣の方を振り返る。
桜花はそんなことをつらつらと考えながら、全く別の話題を口にした。
「明日はもう遠海に出発よ。仕度はできたの?」
これからだ、と伊織はあっさり答える。
「ちゃんと用意しておかないと、当日になってあわてるわよ」
「かまわん。どうせたいしたものは持っていないのだから」
「わたしと同じようなことを言うのね」
「桜花もか? はは……ないもの同士というわけか」
がやがやと明日の準備で忙しい城内で、伊織が呑気に笑った。
一方、勤めを終えて家に帰るなり、和臣は母の姿を探した。今日こそは釘をさしてやらねば。
探すまでもなく、すぐに霧江は顔を見せた。
「お帰りなさい、和臣」
「ただいま戻りました」
挨拶を交わし、刀を母に預けると、間髪入れず和臣は抗議めいた口調で言った。
「母上、いい加減にしてください」
刀をしまっていた霧江は何のことかわからずに、