第159話 二つの刀
文字数 435文字
刀を構えながら駆け寄り、伊織は片手で桜花を抱き起す。
「大丈夫か!?」
喘 ぎながら喉もとを押さえ、桜花はかろうじてうなずいてみせた。
言葉の代わりに手を伊織の手に重ね、まっすぐに見つめる。
今の浅葱には憎悪と復讐しかない。
慟哭に閉ざされた心。現世ではその魂は救われない。
浅葱を救う方法はただひとつ、唯姫のいるところへ送ってやることだけだ。
自分にまなざしを向ける桜花を、伊織は無言で見つめ返した。それは伊織の知っている、よく笑って、そのくせ涙もろい少女ではなかった。
揺るがぬ強い意志を秘めた、破魔の者。
いつの間に桜花はこんなに大人びていたのだろう。
桜花の肩にそっと手をかけると、伊織は決然と立ち上がった。
「参る!」
正面から伊織は猛然と挑みかかり、浅葱もまた憎悪に彩られた漆黒の刃をかざす。
激しくぶつかりあう聖邪二つの刀の威力はほぼ互角。
が、鬼の尋常ならざる敏捷さと強靭さに、伊織の方が苦戦を余儀なくされている。強い憎悪の念が浅葱の力を増幅させているのだ。
「大丈夫か!?」
言葉の代わりに手を伊織の手に重ね、まっすぐに見つめる。
今の浅葱には憎悪と復讐しかない。
慟哭に閉ざされた心。現世ではその魂は救われない。
浅葱を救う方法はただひとつ、唯姫のいるところへ送ってやることだけだ。
自分にまなざしを向ける桜花を、伊織は無言で見つめ返した。それは伊織の知っている、よく笑って、そのくせ涙もろい少女ではなかった。
揺るがぬ強い意志を秘めた、破魔の者。
いつの間に桜花はこんなに大人びていたのだろう。
桜花の肩にそっと手をかけると、伊織は決然と立ち上がった。
「参る!」
正面から伊織は猛然と挑みかかり、浅葱もまた憎悪に彩られた漆黒の刃をかざす。
激しくぶつかりあう聖邪二つの刀の威力はほぼ互角。
が、鬼の尋常ならざる敏捷さと強靭さに、伊織の方が苦戦を余儀なくされている。強い憎悪の念が浅葱の力を増幅させているのだ。