第12話 異母兄
文字数 582文字
だったら大丈夫ですわ、と桜花がふんわり笑う。
「最初は藤音さまも猜疑心にかられておられるかもしれません。でも隼人さまが誠意をお示しになれば、きっとおわかりになってくださいますわ」
「そう、でしょうか」
「はい。桜花はそのように信じております」
桜花どのがそう言われるのなら、とやっと隼人は笑顔を見せる。
「藤音姫は住み慣れた白河 を離れ、知り合いとてない草薙 に嫁いでくる身。桜花どのは年も近いし、どうかよき話し相手になってあげてください」
かしこまりました、と桜花が神妙に一礼した時、隼人を呼ぶ声が聞こえてきた。
「殿、いずこにおいでです?」
小さな木造りの建物の中で、聞き覚えがある声に三人は同時に振り返る。
やがて姿を見せたのは髪をきっちりと結い、仕立てのよい衣装を身につけたひとりの若い武人だった。
声の主は桐生和臣 。ひとつ年上の伊織の異母兄だ。
和臣は三人の姿を見つけると急いで駆け寄ってきた。
「もうじき花嫁が到着するというのに何をしておいでです!?」
それから伊織の方を向いて、
「伊織、そなたは殿を探しに行ったのではなかったのか。今まで何をしていたのだ。しかも桜花どのまで」
「あいすみませぬ、兄上」
「最初は藤音さまも猜疑心にかられておられるかもしれません。でも隼人さまが誠意をお示しになれば、きっとおわかりになってくださいますわ」
「そう、でしょうか」
「はい。桜花はそのように信じております」
桜花どのがそう言われるのなら、とやっと隼人は笑顔を見せる。
「藤音姫は住み慣れた
かしこまりました、と桜花が神妙に一礼した時、隼人を呼ぶ声が聞こえてきた。
「殿、いずこにおいでです?」
小さな木造りの建物の中で、聞き覚えがある声に三人は同時に振り返る。
やがて姿を見せたのは髪をきっちりと結い、仕立てのよい衣装を身につけたひとりの若い武人だった。
声の主は桐生
和臣は三人の姿を見つけると急いで駆け寄ってきた。
「もうじき花嫁が到着するというのに何をしておいでです!?」
それから伊織の方を向いて、
「伊織、そなたは殿を探しに行ったのではなかったのか。今まで何をしていたのだ。しかも桜花どのまで」
「あいすみませぬ、兄上」