第12話 異母兄

エピソード文字数 537文字

 だったら大丈夫ですわ、と桜花がふんわり笑う。
「最初は藤音さまも猜疑心にかられておられるかもしれません。でも隼人さまが誠意をお示しになれば、きっとおわかりになってくださいますわ」
「そう、でしょうか」
「はい。桜花はそのように信じております」
 桜花どのがそう言われるのなら、とやっと隼人は笑顔を見せる。
「藤音姫は住み慣れた白河(しらかわ)を離れ、知り合いとてない草薙(くさなぎ)に嫁いでくる身。桜花どのは年も近いし、どうかよき話し相手になってあげてください」
 かしこまりました、と桜花が神妙に一礼した時、隼人を呼ぶ声が聞こえてきた。
「殿、いずこにおいでです?」
 小さな木造りの建物の中で、聞き覚えがある声に三人は同時に振り返る。
 やがて姿を見せたのは髪をきっちりと結い、仕立てのよい衣装を身につけたひとりの若い武人だった。
 声の主は桐生和臣(かずおみ)。ひとつ年上の伊織の異母兄だ。
 和臣は三人の姿を見つけると急いで駆け寄ってきた。
「もうじき花嫁が到着するというのに何をしておいでです!?
 それから伊織の方を向いて、
「伊織、そなたは殿を探しに行ったのではなかったのか。今まで何をしていたのだ。しかも桜花どのまで」
「あいすみませぬ、兄上」

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登場人物紹介

天宮桜花(あまみやおうか)


始祖が天女と言われる家系に生まれた巫女。

破魔の力を受け継ぐ可憐な少女。

大切な人たちを守るため、鬼と対峙していく。

桐生伊織(きりゅういおり)


始祖が龍であったと言われる家系に生まれる。桜花とは幼馴染。

桜花を想っているが、異母兄への遠慮もあり、口にできない。

九条隼人(くじょうはやと)


草薙の若き聡明な領主。趣味は学問と錬金術。

心優しい少年で藤音を案じているが、どう接してよいかわからず、気持ちを伝えられないでいる。

藤音(ふじね)


和睦の証として人質同然に嫁いできた姫。

隼人の誠実さに惹かれながらも、戦死した弟が忘れられず、心を閉ざしている。

鬼伝承が残る海辺の村で、いつしか魔に魅入られていく……。

浅葱(あさぎ)

愛しい姫を奪われた鬼。世を呪い、九条家に復讐を誓う。

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