第19話 むけられた刃
文字数 575文字
甘やかな想いが隼人をつつみ、この姫が自分の妻になるのかと思うと不思議な気がした。これが縁 というものなのだろうか。
「こんな時は何と言ったらいいのかな。祝言を挙げたとはいえ、わたしたちはまだ互いのことをほとんど知らないし」
はにかんだ、柔らかな笑み。
もしもこれが何のしがらみも謀略もない出会いだったら。藤音はこの少年に好意を持てたかもしれない、とふっと思う。
だが、その笑顔も藤音の決意を変えさせることはできなかった。
顔を上げ、ちょうど向かい合った、次の瞬間。
素早く藤音は懐から短刀を取り出し、隼人めがけて振りかざした。
「お覚悟!」
「藤音どの!?」
驚愕した声を上げながら、間一髪で隼人が刃をかわす。藤音の腕をつかみ、小刀を取り上げようとする。
藤音は腕を押さえつけられたまま、寝床の上に倒された。白い床に艶やかな黒髪がさあっと広がり、握っていた手からぽろりと小刀が落ちる。
「藤音どの、どうして……」
床に組み伏せられたまま、藤音はきっと隼人を見すえた。瞳が憎しみにきらめいている。
「これでおわかりでしょう。わたくしはあなたさまを殺めるために嫁いできたのです!」
隼人の顔に愕然 とした色が浮かぶ。
「こんな時は何と言ったらいいのかな。祝言を挙げたとはいえ、わたしたちはまだ互いのことをほとんど知らないし」
はにかんだ、柔らかな笑み。
もしもこれが何のしがらみも謀略もない出会いだったら。藤音はこの少年に好意を持てたかもしれない、とふっと思う。
だが、その笑顔も藤音の決意を変えさせることはできなかった。
顔を上げ、ちょうど向かい合った、次の瞬間。
素早く藤音は懐から短刀を取り出し、隼人めがけて振りかざした。
「お覚悟!」
「藤音どの!?」
驚愕した声を上げながら、間一髪で隼人が刃をかわす。藤音の腕をつかみ、小刀を取り上げようとする。
藤音は腕を押さえつけられたまま、寝床の上に倒された。白い床に艶やかな黒髪がさあっと広がり、握っていた手からぽろりと小刀が落ちる。
「藤音どの、どうして……」
床に組み伏せられたまま、藤音はきっと隼人を見すえた。瞳が憎しみにきらめいている。
「これでおわかりでしょう。わたくしはあなたさまを殺めるために嫁いできたのです!」
隼人の顔に