第46話 潮の匂い
文字数 415文字
母の気性はよく知っている。こうなると白状するまでは放してもらえまい。
「誰です? 話してくれなければ、賛成も反対もしようがないでしょう」
和臣は覚悟を決め、思い切って告げた。
「家柄なら充分に釣り合いはとれていますよ。天宮の桜花どのです」
翌日。出発は早朝の涼しいうちだった。
草薙は小さな国である。朝早く城を出れば、徒歩でも昼頃には遠海にある館に到着する。
ただし、体調を崩している藤音と付き添いの如月、年かさの家臣たちは夕刻、涼しくなってから駕籠 で現地へと向かう。
館には先に下働きの者たちが入っていて、滞在する者たちを迎え入れる準備がなされている。
行列というほどでもないが、かなりの人数の移動である。
遠海の村が近くなってくると、風に潮の匂いが混じり、海に来たのだと実感させてくれる。
そもそも九条家は遠海が発祥の地だ。以前は城もこの地にあったという。
何らかの事情で城は今の場所に移り、遠海には海辺の館だけが残されている。
「誰です? 話してくれなければ、賛成も反対もしようがないでしょう」
和臣は覚悟を決め、思い切って告げた。
「家柄なら充分に釣り合いはとれていますよ。天宮の桜花どのです」
翌日。出発は早朝の涼しいうちだった。
草薙は小さな国である。朝早く城を出れば、徒歩でも昼頃には遠海にある館に到着する。
ただし、体調を崩している藤音と付き添いの如月、年かさの家臣たちは夕刻、涼しくなってから
館には先に下働きの者たちが入っていて、滞在する者たちを迎え入れる準備がなされている。
行列というほどでもないが、かなりの人数の移動である。
遠海の村が近くなってくると、風に潮の匂いが混じり、海に来たのだと実感させてくれる。
そもそも九条家は遠海が発祥の地だ。以前は城もこの地にあったという。
何らかの事情で城は今の場所に移り、遠海には海辺の館だけが残されている。