第8話 不信

エピソード文字数 471文字

「結城の気持ちもわかるけど、そもそもわたしは戦を終わらせるために、戦に臨んだのだから……矛盾しているけどね」
「せめてあの憎き林宗久の首くらい所望すればよろしいものを」
 すると隼人は真剣な顔つきになって結城を見つめた。
「結城」
「何でございましょう」
 苦虫を噛み潰したような顔で返事をする家老に、
「今さら言うまでもないけど、わたしは昨年、父を亡くした」
「もちろん存じておりますとも」
「厳しくて、叱られてばかりいたけれど、わたしは父上が大好きだった。だから父上が病で亡くなられた時は本当に悲しかった」
 そうでしょうとも、と結城が相槌を打つ。
「なのに結城は、その時のわたしと同じ思いを、林の家族にも味わわせろ……と?」
 隼人の勝ちだった。家老は渋面を作って、うなるしかなかった。 
「しかし、あの林宗久はどうも今ひとつ信用できませんな」
 結城に限らず、今まで幾度も苦汁をなめさせられている家臣たちから、慎重な意見が次々と出てくる。



ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

天宮桜花(あまみやおうか)


始祖が天女と言われる家系に生まれた巫女。

破魔の力を受け継ぐ可憐な少女。

大切な人たちを守るため、鬼と対峙していく。

桐生伊織(きりゅういおり)


始祖が龍であったと言われる家系に生まれる。桜花とは幼馴染。

桜花を想っているが、異母兄への遠慮もあり、口にできない。

九条隼人(くじょうはやと)


草薙の若き聡明な領主。趣味は学問と錬金術。

心優しい少年で藤音を案じているが、どう接してよいかわからず、気持ちを伝えられないでいる。

藤音(ふじね)


和睦の証として人質同然に嫁いできた姫。

隼人の誠実さに惹かれながらも、戦死した弟が忘れられず、心を閉ざしている。

鬼伝承が残る海辺の村で、いつしか魔に魅入られていく……。

浅葱(あさぎ)

愛しい姫を奪われた鬼。世を呪い、九条家に復讐を誓う。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み