第113話 生き方
文字数 586文字
翌日は朝からどんよりした曇り空。
今にも雨粒が落ちてきそうだ。
出仕前、朝餉を取り、着替えた桜花は鳥籠の前に座っていた。
「ごめんね、みゆ。あまりかまってあげられなくて」
怪我をして弱っていたみゆを保護したあたりから、何かと身辺が忙しくなって、心ならずも世話は祖父に任せきりになってしまっている。
みゆは小首をかしげ、つぶらな黒い瞳でこちらを見つめている。
「不思議ね、あなたは人の言葉がわかるみたい。ううん、言葉だけでなく気持ちも」
自分でもよくわからないけれど、なぜかそんな気がしてならない。
怪我はすっかり治り、餌もよく食べるようになっている。この調子なら近いうちに空へ帰せるだろう。
「あなたはいいわね、みゆ」
出仕前のひととき、桜花は小鳥にしみじみと話しかけた。
「元気になれば、自由に空を羽ばたくことができるんだもの」
それに比べて自分は。
桜花は朝から盛大にため息をついた。
考えなければいけない難問が山積みになっている。
特に和臣の求婚。いくら返事は急がないと言われても、いずれは決めなければならない。
今まで巫女として生きるのが当然だった桜花は、辞して嫁ぐことはできると教えられても、いきなり簡単に生き方を変えられるものではない。
今にも雨粒が落ちてきそうだ。
出仕前、朝餉を取り、着替えた桜花は鳥籠の前に座っていた。
「ごめんね、みゆ。あまりかまってあげられなくて」
怪我をして弱っていたみゆを保護したあたりから、何かと身辺が忙しくなって、心ならずも世話は祖父に任せきりになってしまっている。
みゆは小首をかしげ、つぶらな黒い瞳でこちらを見つめている。
「不思議ね、あなたは人の言葉がわかるみたい。ううん、言葉だけでなく気持ちも」
自分でもよくわからないけれど、なぜかそんな気がしてならない。
怪我はすっかり治り、餌もよく食べるようになっている。この調子なら近いうちに空へ帰せるだろう。
「あなたはいいわね、みゆ」
出仕前のひととき、桜花は小鳥にしみじみと話しかけた。
「元気になれば、自由に空を羽ばたくことができるんだもの」
それに比べて自分は。
桜花は朝から盛大にため息をついた。
考えなければいけない難問が山積みになっている。
特に和臣の求婚。いくら返事は急がないと言われても、いずれは決めなければならない。
今まで巫女として生きるのが当然だった桜花は、辞して嫁ぐことはできると教えられても、いきなり簡単に生き方を変えられるものではない。