第3話 探しびと

エピソード文字数 502文字

 そこで伊織は思い出したようにぽん、と手を打った。
「その隼人さまがどこにもいないんだ。さっきから探しているのだが、お姿がない。見かけなかったか?」
 いいえ、と首を横に振りながら、桜花は驚いたように眼をまるくする。
「もうじき花嫁がお城に到着するというのに、隼人さまはいったいどうなさったの?」
「知りたいのはこちらの方だ。肝心の殿の姿が見えないので、城内は大騒ぎだ」
 その時、何かに思い当たったように桜花が小さく声を上げた。
「ね、あの小屋は探してみた? 隼人さまが最近よくこもっていらっしゃる、例の場所よ」
 桜花の言葉に、あの場所があったか、と伊織も弾んだ声を出す。
 とにかく時間が迫っていた。二人は小走りで見当をつけた場所に急ぐ。
 ほどなく城の庭の片隅に小さな建物が見えてきた。簡素な木造りの、掘っ立て小屋と呼んでもいいような代物だ。
「殿、こちらにおいでですか?」
 そう、伊織が声をかけた瞬間だった。
 中からばんっと弾けるような音がして、伊織はとっさに刀の柄に手をかけ、勢いよく戸を開けた。



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登場人物紹介

天宮桜花(あまみやおうか)


始祖が天女と言われる家系に生まれた巫女。

破魔の力を受け継ぐ可憐な少女。

大切な人たちを守るため、鬼と対峙していく。

桐生伊織(きりゅういおり)


始祖が龍であったと言われる家系に生まれる。桜花とは幼馴染。

桜花を想っているが、異母兄への遠慮もあり、口にできない。

九条隼人(くじょうはやと)


草薙の若き聡明な領主。趣味は学問と錬金術。

心優しい少年で藤音を案じているが、どう接してよいかわからず、気持ちを伝えられないでいる。

藤音(ふじね)


和睦の証として人質同然に嫁いできた姫。

隼人の誠実さに惹かれながらも、戦死した弟が忘れられず、心を閉ざしている。

鬼伝承が残る海辺の村で、いつしか魔に魅入られていく……。

浅葱(あさぎ)

愛しい姫を奪われた鬼。世を呪い、九条家に復讐を誓う。

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