第87話  ナリス王国

文字数 1,509文字

 俺はグリスティス・オールバ。

 ナリス王国の青銅騎士団団長だ。

 現在、我が騎士団は隣国ベガ王国と国境線の線引きで揉めている。

 昨年、我がナリス王国はベガ王国との国境紛争で譲歩した。

 その時に決めた約定と実際にベガ王国が国境とした線引きに、恣意的な差異があった。

 そこで、我が騎士団が出撃してベガ王国に圧力を掛けることとなった。

 しかし、その恣意的な差異が実は、計画的な行動だったと俺は直に知ることとなった。

 ベガ王国は確固たる意志の元、我が国と再度の紛争拡張を目論でいたのだった。

 青銅騎士団の到着を待って、ベガ王国の誇る赤鬼騎士団が国境線を越え我が国に侵攻を開始した。

 ベガ王国側の侵攻の大義名分は、青銅騎士団に依る武力侵攻の為の迎撃だった。

 は? 我が国は国境線も越えていないんだぞ!

 迎撃で他国に侵攻すると言うベガ王国の卑劣なやり口に、騎士団員達が激高する。

 しかし、昨年に武力衝突して今年も軍事衝突することになるとは、我が国の読みが外れたとしか言えない。

 ベガ王国に



 ベガ王国とナリス王国とでは、国力・軍事力共に我が国の方が約3倍以上の差がある。

 昨年の武力衝突も突発的なものだった。

 従来であればベガ王国が折れる所を、今までにない強硬な態度で臨んで来ていた為、やむなく我が国が折れた形を取った。

 しかし、この度の仕儀を見るにベガ王国は我が国との戦争を画策している。

 無理筋な理屈で戦端を開いたベガ王国の意図はなんだ?

 ベガ王国単独で我が国に勝てる訳がない。

 陽動作戦なのか?

 ベガ王国との戦争中に、他国が我が国に侵攻するとかはあり得る話ではある。

 ミダス王国かレクリア王国...その両方か? はたまた、他の国か?

 俺は我が国の諜報機関にそれらしき情報はないか、問い合わせるように早急な指示を出した。

 先ずは、赤鬼騎士団の対応だ。

 行くぞ! 我らはナリスを守護する騎士ぞ! 

 全軍! 出撃!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 アルグリア大陸の西方に位置するナリス王国に、ミダス王国とレクリア王国を加えた三国は、西方三国と呼ばれている。

 その西方三国は祖先を辿れば1つの国に行き着く。

 クローマ王国...古の王国。

 三国の王達は元は兄弟であった。

 しかし、クローマ王国の時の国王リステッド・クローマが崩御し、次代の国王の王位継承で紛糾した。

 何故なら先王は、次代の後継者を決めぬままに病で亡くなったからだった。

 先王には4人の息子達と

がいた。

 長男であるミルテッド・クローマは、兄弟の不和が国を滅ぼすことを憂い王位継承を放棄し中立の立場での仲裁を試みた。

 しかし、そんな長男の想いも次男ルネテッド・クローマ、三男ジュステッド・クローマ、四男レセテッド・クローマには届かなかった。

 結局、クローマ王国は次男・三男・四男で当分割された。

 それが、次男ルネテッド・クローマを祖とするミダス王国。

 三男ジュステッド・クローマを祖とするナリス王国。

 四男レセテッド・クローマを祖とするレクリア王国である。


 当分割された後の長男ミルテッド・クローマの消息は知れない。

 放浪の旅に出たとも、国を弱体化させたことを憂い自死したとも言われるが詳細は不明だった。


 そして、先王の1人娘であった王女へレナードは隣国であったベガ王国に嫁いだ。

 その分裂から数百年が経つが、西方三国の不和は解消の兆しを未だ見せない。
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